坂東玉三郎初春特別公演、ル・テアトル銀座。
ホテル西洋銀座と一緒の建物にある。
歌舞伎座は今建て替え中。この劇場で歌舞伎を見るのは初めてだが、やっぱり少し小さいし洋風な舞台だ。
それでも、赤い提灯をつるしたり、紅白の餅花を飾ってお正月らしさ、和の雰囲気を出している。
今回の公演は最初に玉三郎さんからお年賀の口上があるので、遅れないように出かけた。
下の写真は入口に飾られたポスターを撮ったものだが、舞台でも同じ衣装の玉三郎さんが登場、りんりんとした声が場内に響きわたる。
金屏風に緋毛氈(ひもうせん)の赤い色が写りこんで、気持ちがわくわくするような華やかさだ。
そこに赤の補色である紫の頭巾が、全体をきゅっと引き締めている。
歌舞伎を見るといつも思うが、和の色は渋いだけでなく大胆である。
緋色と紫、萌黄色と赤など、補色と鮮やかな色遣いがドラマティックだ。
劇場が額縁なら、役者さんが演じるたびに花のような色が構図の中を動いていく。
演目は妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)の中から 「道行恋苧環(おだまき)」 と「三笠山御殿」の場面。
時代は大化の改新よりも前、蘇我入鹿(そがのいるか)全盛の頃が舞台である。
といっても、蘇我入鹿の名前は学校の頃の日本史以来、ぼんやりとしたうろ覚え。
時代劇や歴史小説では読まないし、歌舞伎で見るまで忘れていた。
そういえば、この名前は「日出る処の天子(山岸涼子)」に出てきた気がする!と、戻ってからまた年表を見たりして。。。
歴史はともかく、ストーリーは男女の三角関係と、権力闘争が絡んでおりなす物語なので、舞台は違えど人間のやることは普遍的だと改めて思うものだ。
御殿に迷い込んだお三輪(玉三郎)を、御殿女中が大勢で寄ってたかって嬲る(なぶる)シーンは、江戸時代の大奥でも現代の大奥でも、形を替えて繰り返されていることだろう。
しかしその衣装から小道具にいたるまで、ひとつひとつに時代の意味や由来が込められていて、日本の文化って本当に深い。
おだまきは糸を繰る道具だが、これは縁結びを願かける象徴でもあった。劇中では恋人を追いかけるのに糸の先を袖に縫いつけ、おだまきを持ってたどっていく。
ほんの一場面なのに時代風俗から歴史まで知ることのできる、歌舞伎は娯楽であって勉強。
これこそ教養である。
小さい頃に母に手をひかれて行ってから、しばらく中断していた私の歌舞伎歴は15年とまだ浅いが、母はもう半世紀。
口上の時に、玉三郎さんがまだ舞台の一番端っこにいるときから見ている。
「あれよあれよという間に席次が上がって、真ん中であいさつするようになったんだよ。苦労したけど、やっぱり才能があったんだねえ。」と母。
女形の人って、しぐさが女性より女らしい。
所作の美しさ、学ぶところは多い。