小さいときは泣き虫で、いつも兄にからかわれては怒り泣き。
泣きそうになるたびに「泣き上戸になっちゃうぞ~」と脅かされていた。
でも、この泣き上戸くんは可愛いし、別に脅しになってないな。
後ろに見えるのは桜の木。
平安京の紫宸殿を模し、お雛様の両側には、左近の桜(さこんのさくら)、右近の橘(うこんのたちばな)といって対の木を飾る。
橘(たちばな)は柑橘の実をつけ、四季を通じて生い茂り縁起がよいとされた。
五月の節句の歌で、
たーちーばーなかおる♪」という一節があるが、みかんやオレンジの花のようにいい香りがする。
この歌を音で覚えて、小さい頃「たちばなかおる」という人名だと思っていたという人がいた。
左から、笑い上戸くん、怒り上戸くん、泣き上戸くん。
随身というお供の家来だ。
真ん中の子は、靴をささげ持っている。
小さなお膳を囲んで、お人形さんごっこをして遊んだ。
後ろの嫁入り三点セットは、小さくてもちゃんと引き出しがあく。
今思うと日本のドールハウスというところ。
五人囃子の中央の鼓を持った子は寝癖がついている。
なでつけてもうまくまとまらない。
20年も箱の中で寝ていたのだもの。
私のおひな様は真ん中の女官が立ち姿で両脇が座っている。
今デパートで見るひな人形は中央の子が座っているのが多いみたいだ。
しかし、この三人官女の右の子はすごい寝癖がついてしまっている。
ちょっと怖いくらいだ・・・。
自分のお雛様だから愛着があるけれど、
人のお人形って、コワイかもしれない。
先日の歌舞伎「三笠山御殿」では、玉三郎さまふんする村娘お三輪が、御殿の女官たちにたっぷりいじめられるシーンがあった。
やれひしゃくの持ち方が違うとか、歩き方がなっていないとか。
左から、太鼓、鼓、小鼓、お囃子、横笛。少しづつ表情が違う。
3月3日のひな祭りまで、早く出すのはいいが、いつまでも出していると嫁に行き遅れるなどといって、母は早々にしまった。
私に任せておくといつになるかわからないから。
自分や妹たちの人形を片付けていた母は、結局、娘の分もしまわなくてはならなくて、やはり小さな木目込み人形にしたのは正解だったのかもしれない。