パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

休日のリラクゼーション

 

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今日は約束のない自由な休日。とりあえず家で過ごそうかな、そんな日は、さあ、あなたの部屋を見回して。

大切なプライベートな場所に、目ざわりなものはない?しかたなく飾ってあるおみやげの人形。どこかでもらった名入りのタオル、安売りショップで買ったプラスチックのバスケット・・・。せっかく、あなたのためにある空間を、不要なものでふさぐのはなぜ?


自分を大切にしたいあなたが、休日にするべきこと。まず、どこかの景品のマグカップを捨てて、ちょっと無理してでも素敵なティーカップを買いに行こう。


そんなカップを使ったら、とっておきのリーフティーを入れたくなる。丁寧にお茶を入れて、豊かな香りを味わい、贅沢な時間を過ごす。ティータイムは、のどの渇きをいやすためだけにあるのではないから。
上等な薄手のカップなら、下に置くときだってガチャンとはさせない。そっとお皿に乗せるでしょう?そうしたら手の動きは自然とエレガントになる。飲み終わっても、シンクの中にほっておいたら、割ってしまうかもしれないと思えば、さっと洗って棚にしまうはず。カップを大切にあつかうあなたは、実は自分を大切にしているの。


ティーカップから始まって、ひとつづつお気に入りを増やしていく。ずっと使える、質の良いものを、吟味してそろえていく。そうやって、本当に安らげる場所を作る、そういう努力をするべき。つまらないものをたくさん買っても、どうせ消えていってしまう。



さて、家具やティーカップは、あなたの目にみえるもの。でもそれ以外の、瞳に映らない空間にも、ちゃんと香りと音というものが存在する。それは、見えないからこそ、気づかないうちに精神と身体にしみ込んでくる。だから、なおさら良いもの、自分に合うものを身近に置く必要がある。

紅茶を入れない日、私は、香木を焚く。それも一番の伽羅(きゃら)。手間と時間をかけることに没頭するうち、頭の中がからっぽになって、しらずリラックスしているからだ。気がつくと、香りがそばにある。それは、幽玄(ゆうげん)なひととき。


でも、疲れきって、何もする気が起きない休日。立ち上がる気力もなく、食べることさえできないとき、リラックスどころか、どうやって、エネルギーを回復したらいい? 


動けなくても、生きている限り息だけはしている。耳をふさがない限り、音は聞こえる。においも音楽も自然に入ってくるものだから。そして、すこしづつ、エネルギーを注ぎ込んでくれる。


CDのスイッチを入れ、一番好きな香りをクッションにつけて抱え、目を閉じる。理由なく、泣いていいよ。じわじわと、自分の身体の中に力が満ちてくるまで、繭(まゆ)の中に入ってしまおう。明日、蝶の夢をみて。



2002/4 satori wrote

 

 

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