そして、ついにある朝、ちょうど日の出の時刻に、姿を見せたのである。
その花は、たいそう念入りに化粧をしたので、欠伸をしながら、
「ああ、やっと目が覚めたわ・・・ごめんなさいね、まだ髪が乱れたままで・・・」
(プチ・プランス 新訳 星の王子様 サン=テグジュペリ著 川上勉 甘楽美登利 訳 :p40)
こうして、その花は咲きはじめるとすぐに、少し疑り深いところのある虚栄心で、彼を苦しめることになったのだ。(同書:p41)
花は、無理やりプチ・プランスのせいにしようとして、空咳をした。
こうして、プチ・プランスはやさしさに満ちた愛情を抱いていたにもかかわらず、早くも花の心を疑うようになっていた。なにげないことばを真に受けて、とても不幸な気持ちになってしまうのだった。(p42)
この後、星を出て旅をするプチ・プランスはたったひとつと思っていた特別な自分のバラが地球ではありふれたたくさんの花の一つだということを知ってがっかりする。
「大切なことは目には見えない」と、プチ・プランスは覚えようとして、繰り返した。
「おまえがバラのために時間を費やしたから、お前のバラはとても大切なものになったんだ」
(同書:p100)
「・・・もしきみが、ある星に咲いている1本の花が好きになったら、夜、空を見上げるのは楽しいものだよ。星がぜんぶ花のように咲きほこるんだから」(同書:p118)
大切なものはなんなのか、そして人はなぜそれを忘れてしまうのか。
書きとめておきたい、言葉の数々。。。
これは子供専用の童話ではなくて、大人のための詩。
この本を開くたびに苦い後悔と甘い感傷が湧くのだった。