ソメイヨシノが満開と聞き、散る前にもう一度ちゃんと桜を見ておきたくて、急いで新宿御苑にやってきた。
おりしも夕べの天気予報で、今日から強い風と雨だという。
満開の時期と、花の嵐の時期はいつも一致する。
いつからか、冬が昔より暖かくなって、桜は昔より早くに散ってしまうように思う。
でも今年は本当に寒かったから、ずいぶん待たされた気分だ。
一方、心待ちにしていたくせに、あわただしい毎日に気がつけばもう満開。
現実と非現実の境が朧(おぼろ)でこの1か月のがよく思い出せない。
真空のように過ぎてしまった。
ソメイヨシノは同じ顔が、そろっていっぱい咲くからきれい。
みんな一緒に咲いて、一緒に散っていく。
そんなところも日本的なのかも。
ピンクのソメイヨシノ、その背景に、オオシマザクラの白い花が透けて見える。
新宿御苑は池があちらこちらに配されて、水面に映る木々や花が心を潤してくれる。
芝生の広場の向こうに、丸い姿のソメイヨシノが立っている。
枝ぶりの気難しい老木に咲く花もよし、素直に成長したまだ若々しい木もよし。
ずっとずっと待ち望んでいたのに、あっという間に散っていってしまう。
喜びって一瞬なのかな?
でも、花の後には実がなって、葉が繁る。
辛い冬の直後は、やさしい花がひとしお心にしみるけど、植物の成長はずっと続いていく。
たとえ秋に枯れても、また次の春に続いていくのだ。
桜はいろいろな種類がある。
濃いピンク、ピンク、淡いうすべに、白。
秋に咲く十月桜、冬に咲く寒緋桜、そしてこのソメイヨシノ。
まだこれからも、八重桜などが咲いて、しばらく楽しい。
桜前線は、早く北上して欲しい。