「ハナニラ(花韮)」というと、いかにも野卑な花の様だが、別名の「ベツレヘムの星」の方がふさわしいと思う。
小さな白い6弁の花は清楚で、細い茎の先に、一輪づつつく。
群れて咲くといっぱいの星のようだ。
ごくありふれた花で、今の時期は道端や公園にたくさん咲いている。
葉っぱは細く、ニラに似た強い臭いがする。
名前の由来もそこにある。
なので韮(ニラ)の仲間のように思われるが、同じユリ科でも、遠い親戚くらいの関係だ。
可愛い花なのに、命名が残念と思う。
「オオイヌノフグリ」という青い小さな花だって、「ホシノヒトミ」という別名で呼んであげたい。
でも花は、「どっちでもいいさ」と知らん顔で咲いている。
人の勝手な言い分かもしれない。
子供のころ、小学校の裏の野原で野草を摘んだりして遊んだ。
ハナニラはノビルに似ていて、葉を引き抜くと同じように小さな球根がついている。
先生に見せると、「これは違う、ノビルじゃないよ。食べて毒はないが、おいしくもない。」
そう言われた記憶がある。
学校のあった武蔵野はまだ自然が豊かで、周りにはたくさんの野原があった。
球根についたやわらかい土のにおいと、ネギのようなにおいが、
手のひらで混ざっていた春の放課後。
裏から見ると、花びらの中心に一本筋が入っていて、ここから青みが広がっているかのようだ。
花は思いのほかいい匂いだ。
甘い、粉っぽいヘリオトロピンのような匂い。
▶ 植物事典 ユリ科 イエイオン属 学名 Ipheion uniflorum
別名 西洋甘菜 、 Spring star flower 、イエイオン