「永遠のゼロ」(百田尚樹)というタイトルは書店でよく見ていたが、世の中のランキングにはまったく興味がなくて素通りしていた。
元アシのR子ちゃんが、長いシャンハイ万博から東京に戻ってきて、アトリエに遊びに来たときのこと。お勧めの一冊とこの本を置いていった。
「読み終わったばかりなんですが、すっごく面白いですよ。よかったです、読んでください」
と言っていたけれど、
『カバンが重いからくれたんじゃないかな?』
などと思いつつ(失礼~)、もち帰って読み始めたのだった。
ああ、永遠の「ゼロ」って、ゼロ戦のことなんだ・・・。
古代の戦争でなく、第二次世界大戦と言えばすぐ前のこと。
私が小学校のころは、まだまだ世の中に戦争の記憶が残っており、
親や先生からじかに悲惨なことを聞いて、暗澹とした気持になったものだ。
二次情報ではなく、戦争体験者が、自分自身の身におきたことを語る。
戦車に乗っていた数学の先生も、特攻帰りの歴史の先生もおられた。
勇ましい自慢話をされた人はただの一人もいない。
それは、子供心に本当に悲しくて怖かったのだ。
その年代なので、今になってもまだ生々しいような気がして、
読むのはちょっとしんどいかな・・・。
そんな風に思って読み進んだ。
しかしこの小説は、"孫である主人公が、戦地で亡くなった祖父の朋輩を訪ねて話を聞く、というスタイルで進んでいく"ので、思ったよりもすっと読める。
重い内容ではあるが、今の若い人の素直な目線で書かれ、とても新鮮だ。
ラストの謎解きも感動で、読後感は悲惨さよりも、希望を感じられる良い作品だと思った。
私も戦後生まれだけれども、その子供たち世代、戦争を語られたことのない若い人に読んでもらいたい。
やはり本の売り上げランキングと言うのは確かなのかな~と思ったりした。