何から書き始めようかと思ったが、今日は香道のお稽古を始めた頃の話をしてみたい。
初めての香席では、何を教えていただけるのかと思ったが、ただ皆様と一緒に座って、お隣の方の見よう見まねで香炉を受取り、香りを聞いて、お隣にまわして・・・、とまあ、その場に居させていただいただけで終わってしまった。
お茶の入門は12歳の大昔のことだから、記憶の糸を手繰ってみると、初心者は「割り稽古」といって、水屋や茶室の隅っこへ行って別にお稽古を受ける。基本のお手前を分けて、袱紗さばきとか、茶杓の清め方、茶筅通しなど、何回かにわたって教えていただくことから始まるのだ。
一方、香道ではそういったものはなくて、席順を決める札を引いてお席入りの後、すぐ香のお手前が始まる。
席入りの初めに、古都先生(ご宗家)からその日の香組(どんなお香を組み合わせるか)やテーマとなる和歌などについて説明されるのを拝聴したが、あとは香を聞くことに専念する。
1ヵ月たっても、半年経っても同じことが続く。よくわからないままではあるが、お稽古は修練というより、もっとおおらかでゆったりしている。
しかし、季節に合わせた様々な香組を体験し、一年めぐってみると、何をしているかが、うっすらと見えるような気がするものだ。
香木は、木所(きどころ)と言って6種類あるのだが、初めはどれもみな同じような木の香りのように思えて、なかなか判別できない。
種類によって香りの特徴をつかめるようになったのは、2年目になってからだ。
歴史など興味があれば自分で調べるか、毎回のお稽古中、たまたまその時に出る話題で知る。それは、本には書いていないことも多い。
偶然その回にいあわせれば、香炉の「灰手前」(香炉に炭を埋め、灰に筋をつける)を皆で練習することもある。
少し慣れてきて、お客様気分で香りを聞き、楽しむゆとりが出来、先輩のお手前もなんとなく見覚えたか・・・という、3年目くらいから
「次回は執筆をやりなさい」とか「お手前をやってごらんなさい」と御指名をいただく。ドキ。
執筆と言うのは、その日の記録を書きとめる役のことである。書道の心得がないと、冷や汗がでる。ああ、もっとまじめに書道の授業をするのだったと後悔しきり。
また、香道も袱紗さばきなどがあり、お茶のお手前と少しは重なる部分はあるが、手取り足とり教えていただいたわけではない。
その道20年、30年の高弟の方々はすらすらとされているので、毎回拝見してわかっているつもりでも、やってみると「さて次は何をするんだっけ?」と覚束ない。
先生に助けていただきながらようやく初めてのお手前を終えた時は本当に疲れてしまった。
やっぱり、のんびり香りを聞かせていただいているほうが気楽でいいな、などと不謹慎なことを思ったものだった。
香木のこと、香席のこと、執筆や御亭主など用語も説明しなければと思うのだけれど、とりとめなく、次回に続く・・・。
↑客の時も、硯をすって、手記録紙(解答用紙)に答えを書く。