しずやしず、しずのおだまき繰り返し、昔も今に、なすよしもがな
おだまきを見ると思いだす、この言葉。
音の美しさ、哀しい響きだと思っていたが、意味を知るとなおさら悲しい。
吉野山、峰の白雪踏み分けて、入りにし人の後ぞ恋しき
しずやしず、しずのおだまき・・・と続く。
静御前が、悲嘆の中で舞いながら謡った詩だ。
静は囚われの身、義経と離れ離れになったあと、生まれたばかりの子供を殺された上に、かたきとも思う頼朝の前で舞いを強いられる。
伊勢物語にも、古今集にも 「しずのおだまき」と詠まれている歌がある。
静がそれをもじって作った恋の歌で、静(しず)と賤(しず)、をかけたとも、落ちぶれていたものが成り上がる、という意味もあり、頼朝への皮肉とも言われている。
おだまきの名は、はたおりのときの、糸巻きに似ていることからこの名前がついた。麻糸をくるくると巻く。
もうひとつ、小田巻蒸しというのもある。
小さい頃おなかをこわすと食べさせてもらったものだが、茶碗蒸しの中にうどんが入っている。
これもうどんがつむぎ糸の様だからということで、おだまきの名前がついたそうだ。
花の後ろに、長い尾のような距(きょ)がついているのがオダマキの特徴。
これは園芸品種らしく花弁(本当は萼・がく)が大きく華やかだが、もっと花が小さく、尾がシュウッと長いものもあって形が面白い。
山野草などは地味な感じだが、4月の茶花としても使われる。
おだまきは、日本的な花だと思っていたが、アジアだけでなく、ヨーロッパにも自生するそうだ。
これらは5月のパリで撮影したもの。
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