パルファン サトリの香り紀行

調香師大沢さとりが写真でつづる photo essay

TOKYOとParisの香水匂いだち

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「まったく同じ香水であっても、日本でつけるのと海外とでは、匂いの立ちが全然違う。」
というのは、よく知られた事実である。

 

 

海外と行き来しながら香りを作っているといつも思うことでもある。 

フランスでも同じ処方で調合するために、日本で作った香水の処方や実物を比較のために持っていくたびに感じるこの大きな違い。
これは、気候のせい。特に湿度や温度は大きく関与している。

 

いくつもの試作途中の香水は、紙の上だけでなく肌に載せて時間を追いながら、匂い立ちを確認する。

また、普段の仕事中はコンシャスが下がるので香りをつけることができないのだが、人と会う時などは、プロモーションと追認の意味もこめて製品になった自分の香水をつけていくようにしている。

パリでも南仏でも、東京で作って持っていった香水をつけて、しばしば出かけてみた。

 

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日本で作ったものはどれも軽く持続が短い。つけた途端に、空気中に散っていくような感覚だ。
「こんなに淡いなんて」
1‐2時間もしたら、香りはごく薄くなっている。

 

 

思った以上にほのかだったので、帰国してから再び確認のために同じ香水をつけて時間を計ってみた。

たとえばシルクイリス。朝11時に肘の内側につけた香りは、夜11時帰る時、まだ匂っている。
もちろん、プンプン匂うというのではない。肌にまだやわらかく残っている、という程度だ。

ここではなにか、空気の壁がしっとりと身体を包んで、匂いを逃さないような感覚がある。
香りは、体のそばにとどまって、寄り添うようである。

日本でちょうどよい香水は、海外では淡く感じる。

 

そこで逆説的に思うに、ヨーロッパの香水を、そのまま日本でつければ、数倍は強く、濃く、長く感じるのは当然。
それらは、ヨーロッパの気候の中で際立つように作られているということである。

日本で、香水嫌いの人が、「香水は強くて酔ってしまう」というのは「香水」のせいではなくて、「欧米向けの処方」の組み立てのせいだ。

 

しかし、世界から見て日本のマーケットはごく小さい。
何百万本と製造する香水ブランドは、小さな市場のためにカスタマイズされた商品は作らないだろう。

ヨーロッパで販売するためにはヨーロッパで調香し、日本での販売には日本で調香しなければ、本当にその土地に適した香りはできない、とあらためて感じるのだった。

 

 

 

 

 

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