小さい頃から植物が好きで、いつもポケットに小さな植物図鑑を持っていた。
学校は広大で、松林や原っぱ、グラウンドなどたくさんの緑があった。道路も舗装されていないところが多かったので、ペンペン草を耳のそばで鳴らしたり、オオバコ相撲とか、学校が終わると文字通り道草を食いながら帰ったものだ。
小学校から家までは電車とバスで1時間かかる。当時は都電も走っていた。(年がばれちゃうが)
都電を降りると、乃木公園がある。それほど整備されていなくて雑草がいっぱいだった。当時はやりの「ジュウシマツ」を飼っていたので、ハコベを取って帰る。雑草と呼ばれるものもよく見るとかわいい花をつけていて結構好き。「オオイヌノフグリ」なんてひどい名前はだれが付けたのだろう。青い可憐な花は「ほしのひとみ」の方が似合っている。
赤坂の檜町へ、だらだら坂を下りる途中は、門から家が見えないような大きなお屋敷がたくさんあって、うっそうとした木が繁っていた。アオスジタテハ(アゲハの一種)が鋭角に翔んでいた。しじみちょうは足元にいくらでもいた。モンシロチョウやモンキチョウを見かけなくなったのはいつ頃からだろう?
今は、都会にはほとんど空き地がないけど、街路樹の下の小さなスペースにもひっそりとハコベは咲いていた。一瞬、葉を摘んで匂いをかいでみようかなと思ったけれど、柔らかい緑があまりいじらしくて手をつけられなかった。
写真:明治通り沿いのハコベとペンペン草