パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

キンモクセイ(金木犀)のにおいはなぜ遠くまで届くのか osmanthus

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キンモクセイ金木犀)の香りは、花の香りの中でもっとも遠くまで届くそうである。
なぜそうなのか?をまじめに研究している香料会社もある。

新宿御苑では、バラも、タイサンボクも、ジンチョウゲクチナシも、風に乗って遠くまで、どれもよく匂うけれども・・・。
キンモクセイは特別なのだそうだ。

 

キンモクセイは一輪は小さいながらも、一斉に咲くし、全体として数が多いから強く匂うのかと思えば、確かにひと房のキンモクセイでも充分香りがする。

強いといっても、キツイという意味でなく、遠くまでよく拡散するという強さだ。

 

香りの中心はγデカラクトンというフルーティーな香り、ベータヨノンというウッディパウダリーな匂い、リナロールと言う天然に多く存在するさわやかな香気成分、が大きい要素となっている。

ラクトンは分子量が大きくて重いし、ヨノンも単独では遠くまでいくような香りではないのに、リナロールも含めたこれらの組み合わせだとうまく飛ぶようである。

 

 

 

昔、昔のこと、

10月に入るやいなや、親戚の子供の軽い咳が始まる。
そんなことがあった。

毎年この時期の診察で、経験豊かなお爺さんの小児科の先生は「キンモクセイの花の頃だからね」
とつぶやかれ、連れて行った私も「そういえば来る途中でいい匂いがしたなあ」と思うのだった。

たぶん、ぜんそくの起きる大気の変化、気圧や気温の条件と、キンモクセイの咲く条件が一緒なのだと思う。
匂いの直接的なせいではない。

 

中国原産の花で、日本では誰もが知っているキンモクセイ
校庭や公園に植樹され、幼い想い出に重なっている。


ヨーロッパからこの時期日本に来た観光客は、初めて金木犀の存在を知って感動するらしい。
可愛らしいオレンジ色の小さな花と、甘くフルーティな香りはとても魅力的だ。

 

今年は花の咲く時期が少しばらけているようだ。
一つの木に枯れた花殻があって、蕾もあって、咲いているのもある。

そのせいか、例年より気散する香気が薄いような気もするが、長く楽しめるのが嬉しい。

 

今夜の雨で散ってしまわなければいいなあ。

 

 

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