パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

キンモクセイの香り Osmanthus fragrans var. aurantiacus

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どういうわけか、今年はキンモクセイ金木犀)の花の足並みがそろわない。
たびたびの嵐のせいかな。

9月の終わりには咲き始めた木もあったのに、タイミングが悪いのか、一斉に鈴なりに咲くキンモクセイの花をまだ見ていない。

通常は、花は1週間ほどで咲き切ってしまうものだけど。

10月5日には上のようなこんな感じだったから、そのままわっと咲くかな~と思ったが、不完全燃焼のようだ。

今朝は新宿御苑のどの木も花がなかった。

あーあ、とうとう終わってしまったのかと思ったけど、よく見ればこれから咲きそうな蕾もついているので、まだあとしばらく香りを楽しめそうである。

 

 

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たまたま散歩の途中で一緒になったご年配の方が、「6年かかって徐々に鼻が利かなくなってしまい、今では花を見ても香りをかごうという気にならない」とさみしそうにされていた。

「トレーニングすれば少しづつ回復しますよ」と話したが、匂いがわからなくなるというのは辛いことだ。

 

キンモクセイの匂いは遠くまでよく届く。


春のジンチョウゲ、秋のキンモクセイはどちらもアジア原産である。

四季を代表する、日本の花の香りの双璧である。

 

 

 

 

 

2011年キンモクセイの香りについて:

金木犀からは天然香料も採られる。天然香料は咲いている花の匂いとは違う。爽やかな部分はもっと凝縮され、コクのある甘さとむしろアニマル感がある。

そのため、咲いている花の香りを再現するには、別の香料を組み合わせて調合香料をつくる。

 

金木犀の中心的な香りは「βヨノン」と「γデカラクトン」である。(もちろん他にも100に及ぶ成分が入っているが)

「βヨノン」は、粉っぽくウッディで、それ自体を一品で嗅ぐと、拡散性があるように思えないが、キンモクセイの香りの中にあっては、この「β―ヨノン」が遠くまで香りを運ぶ働きをする。

「 γデカラクトン」はフルーティな部分を受け持っている。甘い果実感は桃の香りにも似ているが、ピーチを作るには「γウンデカラクトン」を使う。

 

一口にフルーティと言っても系統があり、フローラルといってもグループがある。

キンモクセイやピーチ系、アップルの香りはジャスミンやミュゲ(スズラン)と相性がよい。

一方、
ローズはライチと合うが、ピーチ系とは難しい。

 

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