パルファン サトリの香り紀行

調香師大沢さとりが写真でつづる photo essay

玉虫 タマムシ色 Jewel Beetle

120730玉虫.jpg

なるほど、玉虫(たまむし)は英語で「Jewel Beetle」と言うのか。
標本でなく、生きた玉虫は確かに宝石のようだ。

たまたまアトリエの近所で見つけた玉虫。
生きている玉虫を見るのは、生まれてからたった3度である。

それほどとても珍しい。
ケヤキや楡のこずえのほうに住んでいるので、めったにお目にかかれない。

 

子供の頃の教科書にも載っている玉虫の厨子が、数年前国立博物館で展示され、見に行ったことがある。

だいぶいたんではいたけれど、翅の輝きは残されていた。
昔の日本には宝石というものがなかったから、玉虫はとても貴重であったと推測される。

若い人に聞いたら「玉虫の厨子」を知らなかったので、いまの教科書には載っていないのかもしれない。

 

120730玉虫3.jpg

最初に玉虫を見たのは小さい頃。
年の離れた兄は、引き出しを開けて死んだ玉虫を得意そうに見せてくれた。

エメラルドグリーンと臙脂色の縦じまの、きれいな昆虫だと思った。


その後私は大人になって、小学生くらいの男の子がシャツの胸にとまらせているのを見た。
これが生きた玉虫を見た初めてである。

背の高い木の下に落ちているのを見つけたそうである。
玉虫が歩くにつれ、翅がキラキラと輝いてまるで宝石で作ったブローチのようであった。

 

2年ほど前、明治神宮の池のほとりで、空飛ぶ玉虫を見た。
何か御利益があるような気がしたものだ。
これが2回目。

 

120730玉虫2.jpg

そして3日目の今回は、そばでじっくり見ることができたのである。
じっとして動かなかった玉虫はやがて、のそのそと枝をはいながら、先まで上り詰めると飛んで行ってしまった。
明治通りの夏の暑いアスファルトの上を、ブーンと言う音を立てて空高く去っていった。

新宿御苑に帰れるといいけれど。

 

タマムシ色の回答とは、どうとでも変化するあいまいな答えのこと。

 

 

Copyright © PARFUM SATORI All Rights Reserved.