植物園の巣穴かあ・・・。
大阪出張の帰り、新幹線の待ち時間にちょっと立ち寄った書店にて、魅力的なタイトルの本を見つけた。
帯に「月下香の匂ひ漂う一夜。」と書いてある。
手にとってパラパラとめくり、時間がないので「あとがき」を先にちら読みすると「静かで温かなゴールが用意されている」という一言があり、買うことにした。
ちょっと疲れた時に、やさしく癒してくれるような本が読みたかったから。
それは植物園に勤める主人公が、湿地帯に生える大きな木のうろと、しくしく痛む虫歯との間にさまよう夢と現(うつつ)の物語。ほのぼのしたおかしみのある小説である。
怪異譚と言っても、夢の中では奇妙なことも理屈にあっているように、きちんと筋が通っている。
最後まで読むとすべての出来事が意味のある符丁であり、伏線とともに論理的に組み立てられた内容となっているのがわかる。
著者の名前からもっと現代風の小説を想像していたが、古色めかしい文章でとても奇妙な感じを受けた。まるで、夏目漱石の三四郎を読んだ時のような、さらさらと淡々とした流れるような文体。
最近ではちょっとお目にかかれない、とても品がある感じがした。
時代が古いのだから、文体も古めかしいのか。
奇妙な空間に引き込まれてしまう。
読みながら寝てしまい、私の夢の中にまでおかしなものが登場してちょっとうなされた。
呼んでいる途中思い直して『昔の小説かな、、昭和初期の人かしら』と途中でもう一度、著者のプロフィールを読んでみると、思いのほかまだ若い方だ。
なんと文庫になってまだ1カ月だった。
これまでの著書には「西の魔女が死んだ」など有名な作品もあるではないか。
本当に世間知らず(書籍しらず)だと冷や汗。
もともと小説には内弁慶なこともあり、新しい作家に手を出すのは慎重なのであるが、あまりのおもしろさにこのあと2冊すぐに買ってしまった。
「家守奇譚(字が出てこない)」早速に面白い。
この人の本を読みつくすまで、しばらく楽しみである。
植物に対する愛情がたっぷりの内容で、何回も読み直してみると、植物学の父、牧野富太郎先生のユーモアを彷彿とさせられる。
さらに、科学の目と不思議世界は中谷宇吉郎先生の随筆の様でもある。
自分も植物が好きなので、植物園の様子や草花の名前などとても興味深い。
一緒に散歩しているような気分で、一気に楽しく読んでしまった。
仕事の後も、メール、フェイスブックやツイッターなどをしていると、あっという間に時間が過ぎて、以前より本を読む時間が少なくなってしまった。
以前はベッドで本を開かないと眠れなかったものだが、ときどきは携帯を持ったまま寝落ちしていることもある。
やっぱり、本はいいなあ。
電子図書もあるけれど、紙の手触りに癒される。。。