紐かけと箱 box
初期のころ、素敵なボトルは日本にはなくて、フランスのボトルを少しばかり手に入れて作ってみたりした。
しかし、ねじ式ではなく、落とし込んだだけのストッパー型のキャップでは、輸送中に蓋が取れてこぼれてしまうかもしれない。
実際に製品を作ってみると、その先のさまざまな問題が見えてくるものである。
そこで、フランスの古い本に載っていた紐かけの写真を参考に、このボトルに合うように工夫してみた。
香水瓶が手に入っても、当時はそれを入れるまともな箱がないから自分で作ることにした。
ブランデーの箱や色々な箱を解体して、仕組みを研究した。
思いついて、既成の宝石用のケースを利用し、ボトルに合わせて中敷きを作りセットする。
小さいころから工作は得意だったのが、思わぬところで役に立った。
箱を探すところから数週間、最初の1個を作るのに、設計して完成まで数日を要した。
ひとつできれば、次は数時間でできる。
やがて、5個、10個とまとめて作ったりして。
やがて箱屋さんに発注するまでになり、数年後には、1ロット1000個単位に至った。
思えば最初の一個目が試作品としてつながっている。
ずいぶん回り道したものだとは思うけど、なんにしても、完成図を思い描いて作っていくというのは面白いものだ。
与えられた環境でできる限りのことをする、ということしかできず、それは今でもやっぱりそうだ。
ひとりで始めるっていうことは、そんなものだと思う。