これは今年の6月に新宿御苑の母子森(ははこもり)にいた赤いトンボ。
水辺にたくさん飛来していた。
赤蜻蛉(アキアカネ)は秋のものだと思っていたが、不思議な気がして、あとでこの写真をよく調べてみると「ショウジョウトンボ」という夏によく見かける種類のようだ。
このトンボの赤い色は、アキアカネより濃い。
猩々緋(ショウジョウヒ)というのは暗い赤で、戦国武将の陣羽織などに使われた色である。
蜻蛉は前にしか進まないので、勝虫(かちむし)と言って武将には好まれたらしい。
上は8月の終わりに撮影。
翅の先が黒い。
体の色が薄いので、メスのコノシメトンボだろうか。
おしゃれなトンボ。
蜻蛉の季節感は秋のようでもあり、浴衣(ゆかた)の定番の柄にトンボがあることを考えると夏の感じもする。
俳句の世界では、「糸蜻蛉」や「川蜻蛉」など種類によっては夏の季語だが、ただの「蜻蛉」は秋の季語、となるらしい。
上はシオカラトンボだと思う。
新宿御苑にはいろいろな種類の蜻蛉が見られる。
小さい頃は池のそばなどでよく見たものだけど、最近ではあまり見かけない。
身近に水辺が少なくなっているのだろう。
蜻蛉はとてもユニークな姿。
面白みがあるこの昆虫の形は、布の柄や漆、螺鈿(らでん)など日本の工芸デザインに古くから取り入れられた。
こうした日本の伝統工芸に触発されて、ヨーロッパでジャポニズムが、アールヌーボーが興ったのである。
その影響でエミール・ガレやドームなどの装飾にも、蜻蛉のモチーフがさかんに使われている。
それについてはまた別の機会に。