パルファン サトリの香り紀行

調香師大沢さとりが写真でつづる photo essay

マティス美術館 ニース Henri Matisse

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「ハイ!Satori, 今日はピクニックに行かないか?」
 
実はこの月曜日はフランスのナショナルホリデー。5月の末から6月にかけては結構、祭日があったりして、思いのほか仕事にならない。出張前に、オランダの祝日は調べてきたのだけど、フランスのはうっかり忘れていた。
 
 
 
毎年、もうちょっと遅く来るのだが、今回はパリのポップアップストアの関係で渡仏を前倒ししたところ、日本で言うゴールデンウィークに重なってしまい、会いたい人は海外へ、あるいは日本にと、入れ違いだったりしている。
 
逆に、私にとってのホリデーも多く、今回は美術館巡りなどできてうれしい半面も。
 
Cannesからニースは車でわずか30分ほど。この日はカンヌの友人と、ドライブしながらニースのピカソ美術館へ連れて行ってもらう。
 
 
 
 
と思ったら、月曜日は休館日。ええー、祭日なのに休館?日本ならそんな時は火曜日が休館になるのに。。。
 
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とりあえず、ピクニックのお弁当はニースの小さな市場で買う。焼きたてのバゲットと、アンチョビ、小さなタコのマリネ、チェリー。簡単な食材を買ってマティス美術館のある、アレーヌ・ド・シミエ公園(Parc des Arène de Cimiez)に向かう。
 
 
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一昨年はシャガール美術館に行った。とてもよかったが、そのときはもうシャガールだけで胸がいっぱい。他のところに行く気がしなかった。
 
 
今回のマティス美術館はそのシャガール美術館のすぐ近く、シミエの丘を上がったところである。
 
 
 
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マティス美術館を囲むような、アレーヌ・ド・シミエ公園(Parc des Arène de Cimiez)の駐車場前には、シミエ・フランシスコ修道院がある。
 
 
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これがアメリカの「サンフランシスコ」の語源になった、という歴史ある教会なのだが、今回はスルーしてしまいとても残念。中には有名な「ピエタ」がある。
 
 
 
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ここもオリーブの林がある。ルノアールの家のオリーブより小さいけど、密に植わっていて本数も多い。
 
 
 
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先にこっちに来てたら、もっと感動したと思うんだけど。。。ルノアールの庭の木のほうが風格があったから。
 
古いオリーブって素敵な木だ。
 
 
 
 
ベンチに座ってお弁当タイム。バゲットとアンチョビマリネが最高においしい!
 
 
到着したときは腹ペコだったので、フォービズム(野獣派)と化してランチにありつくのだった。(意味不明)
 
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公園の中でお弁当をのんびり食べた後、美術館へ向かう。赤く彩色された建物は、昔はホテルだったそう。
 
 
 
ふーん、なんか、イメージとちょっと違うけど。ここがマティス美術館。
 
 
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中に入ると手荷物検査があって、わりに厳しい。と思ったら意外にサンパな警備のお人、
 
「どっから来たんだ、ジャポネか、俺は日本が一番好きだ!」
 
などとニコニコしながらおっしゃる。
『わー、いいひと~!』
 
とか思ったら、次に入場する若い女性にも、
「イタリアから来たの?俺はイタリアンが一等好きだぜ!!」
 
などとこっちを見ながらニヤニヤ。みんなに言っているのね、いっぱい喰ったわ((笑))
 
 
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えーと、中の絵は3つくらい素晴らしいと思うものがあった。
私の好きだったのは裸婦のデッサンと、椅子に座る女性のデッサン。
 
 
ほんの一本の線が、女性の二の腕の柔らかさを、そして腰から腿にかけての豊かさを、「視覚」である絵なのに、「触覚的」に訴える。
 
あと、裸婦の彫刻。真っ黒い塊が横たわり、筋肉の強さ、しなやかさを感じさせる。
 
 
女性の体の美しさ、とりわけ「脂肪の乗った丸み」がとても魅力的ということを、南仏で再認識する。
 
美術館自体の作りが広く天井が高く、そして静かで、すぐ近くで見られるということも、作品を鑑賞する環境としてとても心地よい。
 
 
部屋は時代、テーマごとに分かれている。
 
ある部屋では、なんだかスーラにも似てるし、Renoirにも似てる、タッチの違う絵がいっぱいあると思ったら、若いころに有名な作家の作品を模写した時の習作だそう。そういえば、コピーの部屋とか書いてあったっけ。
 
 
謙虚に学び、受け入れ、自分のものに消化していく。
 
 
 
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建物の外、公園の中にはローマ時代の円形闘技場や浴場跡の遺跡が残っている。ヨーロッパは石の歴史だなあと思う。
 
 
 
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兵(つわもの)どもの夢のあと、か。
 
 
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古いサイプレスの木立を抜ける。カンファーに甘くバルサミックで濃い緑の香りが混ざり合う。
 
 
この木の香りを見るたびに思い出す、アガサクリスティの「サッド・サイプレス」という原題を持つ、「杉の柩」は私の好きな小説。ポワロも登場するロマンティックサスペンスである。

若いころから、この小説の中の光景を思い浮かべていたから、欧州に来れたのかな、とか思ってしまう。
 
 
 
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石積みの階段にも、温かな色合いとリズムがある。公園から教会へ続く。
 
 
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外へ出ればまた南仏の明るい日差しがいっぱいにさして、祭日のこともあり子供たちのにぎやかな声が響く。
 
ちょっと走ればもう海。
 
 
 
 
夢のような南仏の一日が、走馬灯のようにまた過ぎていく。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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