南仏カーニュ・シュル・メール（Cagnes-sur-Mer）の丘の上、「ルノワール（Renoir）の家美術館」に行く。少女趣味的独善による私的な見解を述べてみたい。
特徴的なくちびる、やや扁平な丸い顔、豊かな腰。
なぜ後半のルノアールの作品のモデルの顔が似ているのか、ここにきてようやくわかったような気がする。
この日は「ルノアールの家」美術館の、たまたま月一回の無料入場日。
ルノアールが晩年を過ごした家。まず、アプローチから始まる、大きな古いオリーブの林がとても素晴らしい。
「このまま絵にしたらいいだけ」（もちろんそうじゃないけど）、というような気もしてくるくらい、柔らかく明るい光と色の美しさ。。。
ここが彼の建てた家。
外からみた窓を、中から見たのが下の写真。
リビングの窓から、遠く海が見える。バラ色の、なんて幸せな空間。生前の家具をできるだけ忠実に再現しておいてあるそうだ。
1階には彫刻家のリシャール・ギノ、ルイ・モレルとコラボレーションの作品が並ぶ。とても迫力がある。
作品の特徴の一つ、腰から臀部にかけてのおおらかな線。どっしりとして暖かく、母性的で強い。
これはRenoirの最後の妻、アリーヌ夫人の胸像。豊かな胸、やや反った唇、ふっくらとした面立ち。
彫像の多くはこの反った唇を持っている。息子にもそっくり。
とても美しい建物。白い階段には光が満ち溢れている。
生前のアトリエも、イーゼルや道具とともに公開されているが、主人公なしでは、（痛ましくて）写真を載せることができない。
この少女はアリーヌ夫人によく似ていると思う。
この家は小高い丘の上に建てられており、テラスからはカーニュの街と、向こうに地中海が臨（のぞ）める。海から吹き上げる風もフレッシュで、リウマチを患っていた晩年のルノアールにはよい気候だったに違いない。
暮らしを垣間見える「ルノワールの家」
このリビングには、愛と幸せがあるように思う。
「私もこんなおうちに住みたい」という少女趣味的独善。
研究者でないから、あくまでもイメージによる見解。
ビーナスのこの唇に、庭でも会った。扁平な顔と、共通にみられる特徴。ルノアールにとって、最後の妻は最愛の人だったのだと、ここへきてひとりロマンチックに思っている。
それまで、ルノアールの柔らかいタッチは好ましいものの、なぜ彼の描く女性が、彫りの深いいわゆる西洋美人タイプではないのか？そしてなぜ、それなのに人気があるのか、がちょっと不思議だった。
でも、この地に来てこの暖かい母性、豊かさ、素朴なゆえの美徳、というものが少し腑に落ちた気がする。顔は、南方の血が入っているのだろうか。息子の写真も飾ってあったが、お母さんにそっくり。
作り手としては、「作品」を見てもらいたいのであって、その「生活」を死後にあれこれいじられたくないという気持ちがある。
だから作家の作品はみたくても、彼らの日常を覗（のぞ）くのは気が引ける。とはいえ、この暮らしを見たからこそちょっとだけ作品に近づいた気がするのも確かなのである。
ルノアールの作品の中にもある農家の裏手。中では息子が撮った映画が上映されている。
（記憶ではそうだったと思う。）
ビバ！フランス！
