パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

秋のアオスジアゲハ Graphium sarpedon

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私の覚えでは「アオスジタテハ」なのだけれど、「アオスジアゲハ」というのが正しい名前らしい。
幼虫はクスノキの葉を食べるとか、この蝶はよく森の中で見る。

 
夏の間、敏捷に飛び回っていたアオスジアゲハ。
嵐の去った秋のある日、散歩をしていると、目の前をゆっくりと横切った。

「今日はずいぶんふわふわと飛んでいるなあ」
まるで、クロアゲハのようにゆるやかに、こずえと地面を行ったり来たり。
 
「いったい、どこに止まるのかな」
 
と気になって、つい追いかけはじめる。
しばらく飛んでいたと思ったら、舗装された道路の上にゆらりと着地した。
 
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そんなところには、花もなければ水気も無い。
 
そっとそっと、写真を撮りながら近くへ行く。
ほんのすぐそばまで来たのに、逃げようとしない。
 
時々翅を広げたり閉じたりして、そしてじっとして、やがて翅が倒れ、動かなくなった。
 
よく見れば、青は色褪せて、翅はボロボロに傷んでいる。
 
ずいぶん苦労したんだね。
もう、死んじゃうのかな。
 
みんな、いつかさよならするの。
 
 
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道路にいては踏まれてしまうし
そして、知らずに踏んだ人も悲しいでしょう?
 
せめて生まれた場所を思わせる木の上に、しがみついていた落ち葉と一緒に置いてみる。
 
 
哀れなの?淋しいの?

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でも私は覚えている。

夏の茂った薄暗い森の中で、ヤブカラシの橙色の小さな花から花へと忙しく渡る姿を。
 
たった一日しか咲かない、カラスウリの白い花を背にして、サファイヤブルーの翅は、木漏れ日を通るたびキラキラと輝いていたでしょう。
 
 
もしやあれこそが天国だったのかしら?
 
 
 
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