フランスのカンヌの沖にあるレランス諸島 (Îles de Lérins) 、サント=マルグリット島 (Île Sainte-Marguerite)。
海岸から内陸に入るとそこはまた別世界。おとぎ話の森のような道が続く。
明るい光と鳥のさえずりがこだまする中、この乾いた土の道が郷愁を誘う。
南仏に来るたびに思う、ここは懐かしい夢の中。
小さいころから夢想癖。現実ではない場所に私の世界が育っていった。
それを助けたのが読書。
時にヒロインになり、時にわき役としてその舞台を生きた。
私の好きな読みもの。
でも、時代小説も読むし、ハードボイルドも読むわ。
映画は小説ほど読まないけど、好きなシーンはある。
フランスに来ると、私はいつも自分の空想の世界に来たのかな?と思う。
はっと目が覚めたら、また東京の自分のアトリエにいるのではないかと。
なにかのはずみに、
東京のアトリエにいてさえ、あの褪(あ)せた空を見てさえ、内側の私は、蒼く濃いカンヌの海にいることができるし、
冬のある日、歩いているときに頬をなぶる冬の冷たい風に面してでも、南仏の高台に吹き上げるフレッシュな海風を感じることができる。
なので、内側の私と、外側の私はいつもスイッチして、どちらが現実なのか本当のところ分からない気持ちがする。
この小さなサントマルグリット島でさえ、一つ角を曲がれば、海と内陸で様相が違う。同じなのは、どちらもパラダイスで、そこは懐かしい、静かな、インナーマインドっていうこと。
そんな、異なる世界に住んでいる私が好きだ。そこでの私はのびのびとして、空気と溶け合っているから。
成長って、上に伸びていくだけでなくて、芯の部分を中心に、タマネギのように重ねていく面もあるみたい。
10年ぶんずつはがしていったら、結局10代の私が顕れるんじゃないだろうか。