パルファン サトリの香り紀行

調香師大沢さとりが写真でつづる photo essay

カジノキ② 梶の葉のお手前 Broussonetia papyrifera

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木の名札を読んで「カジノキ」とあった時、ふとこの葉を使った手前(てまえ)を思いだした。

梶の木の葉は、切れこみが無く卵形のこともあるし、葉が裂けて3つになったり、かしわもちを包む葉の様に5つに分かれることもある。

 

このカジノキの大きな葉は、茶道の夏の薄茶席で、水指の蓋に使うことがある。

昔、娘時代に通っていた茶道の先生のお庭はちょっとした広さがあり、お茶で使う茶花などさまざまな植物が植えられていた。

 

七夕の時期、夏の暑い日に、「今日は葉蓋を使いましょう」といって、庭から切ったばかりの梶の葉を、お水屋の鉢の中に数葉つけてあって、涼しげだったのを覚えている。

水指の上に蓋の代わりに梶の葉を置いて、風炉のそばに運ぶ。

お手前の中で、葉蓋は開けたら折りたたんで建水に捨ててしまう。

葉蓋を右手で取り、縦二つに折り、茎が左に向くように横にむけて、三つか四つに小さく折りたたみ、折った葉にちょっと穴を開け茎の端を差しこんでとめ、建水の中に伏せて入れる。

 

この葉は、一回のお手前で一枚使ってしまうので、お稽古の人数分が必要である。

 
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これは5月の梶の花と葉。
切れこみが無く素直な葉の形だ。
先生のところで使った梶の葉も、切れこみが無かったように思う。
 
 
 

古来この梶の木の葉には、短冊の代わりにして和歌を書いていたそうである。
もともと、コウゾの仲間で紙の原料にもなるから不思議ではない(んじゃないかな)。

冷泉家では特に、七夕にこの葉を用いて歌を書く行事がある。

 

そんなことから葉蓋の手前をこの時期に行なうのかもしれない。

お茶の先生には、お手前のおりおり由来を聞いたはずなのだが、忘れてしまったことの方が多い。
シーンだけが切り取られて記憶の中に留まっているばかり。

 

 

 

 

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