パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

シャネルの5番 CHANEL No.5 エルネスト・ボー 1921年

 

chanelIMGP0618.JPG

 

 

シャネルの5番は、1921年の発売以来、20世紀の香水市場において常にトップの座にいつづけた驚異的な香水である。

この名香は、また調香師エルネスト・ボーの名を集らしめた。彼は、1917年のロシア革命以前にモスクワで調香師として働き、その後パリに亡命した。シャネルと出会った彼は、香水の調香を依頼される。

合成香料アルデヒドはそれまで香水の中にほんの微量しか用いられなかったが、5番にはそれまでの常識を破ってドカンと処方された。それを和らげ、効果的にするためにローズ、ジャスミン、イランイラン、動物性などの天然香料が贅沢に使用された。

アルデヒドタイプというまったく新しい香調を作り出した彼は、偉大なクリエイティブ・パフューマーである。(一説には、コンパウンドの段階で、アシスタントが10%ソリューションを間違えて、10倍量入れてしまったという話もあるが)10本の試作品の中からこれを選んだシャネルもまた慧眼。

ボトルは、彼女のファッション<ボーイッシュにすることで女性らしさをにじませるテクニック>と同じく、余計な装飾をすっかり省いて、シャープな形に白と黒のすっきりしたラベルが垢ぬけている。

写真は、おそらく1924年ニューヨークで発売されたモデル。エメラルドカットの蓋が、現在のものより薄い。発売当初からほとんどモデルチェンジをしていないことでも、ボトルデザインの完成度の高さをうかがわせる。

もう一枚は、アンディ・ウォーホールが箱をデザインした限定版で、珍しい。

マリリンモンローの「私はシャネルの5番を着て寝る」の名セリフも有名だが、この香水は金髪碧眼の、こってりと脂肪が乗った白人女性の肌には似合うが、日本人には少し難しい。

 

684No5アンディウォーホール.jpg

 

 

 

 

Copyright © PARFUM SATORI All Rights Reserved.