「なのはな」はとても親しまれている春の花だ。
葉の若い頃はお浸しにして食べたり、花を鑑賞したり、種を搾ってナタネ油とする。
食用にする頃は「アオナ」といわれ、花が咲くころは「菜の花」と、そして種子ができれば「ナタネ」と名が変わる、まるで出世魚ならぬ出世植物のようである。
菜の花の広がる畑は、春の景色としても愛され、歌や詩に数多く詠まれている。
ああそれなのに!
私のアルバムに、まともな菜の花の写真がないなんて?あまりに身近すぎて軽んじていたのかな。
思いおこせば6つの年の学校へ通う道すがら。春ともなれば電車を待つ駅のホームも、風が和らぐのを感じたものである。そして線路沿いの日当たりのよい土手や空き地は、菜の花とムラサキハナナの2色のじゅうたんで染められる。
いつのまにか日差しがまばゆく思われ、しかしその春の光景は、何十年たった今でもあまり変わらないのが不思議な気持ちである。
菜の花は幼馴染のような花だ。寂しい時に会いたくなり、あえばそこにいて笑っている。
美しいとも、魅了されるとも違う。
ただ、いつもあたたかい。