パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

アルヴォ ペルト'鏡の中の鏡'庭園美術館 Spiegel im Spiegel

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香りもそうなのですが、音を聴いているとそこに集中して、心を委(ゆだ)ねられるので気がつけば余計なことを考えずにいる自分がいます。


日曜日、旧朝香宮邸(きゅうあさかのみやてい)庭園美術館コンサートにお誘い頂き、松田理奈さんの素敵なヴァイオリンを聴いてまいりました。このところ忙しくしていましたので、久しぶりの心の安らぎとなりました。


どの曲も素晴らしかったのですが、中でも2曲目に奏でられたアルヴォ・ペルトの「鏡の中の鏡/Spiegel im Spiegel」が今の私の心に響いて、脳の澱(おり)というか穢(けが)れがすっかり洗い流されたような気がします。

パンフレットに書かれた理奈さんのこの曲目解説の中に、「・・・奏者としても観衆としても、『今、という空間』からどこか違う空間にいるかのような錯覚に陥る要素があるように感じています...」とあります。演奏の前の語りも素敵で、始まる曲に興味深く耳を傾けました。



を閉じて、音に想いをゆだねた私が連れていかれたのはこんな空間。

「・・・乾燥してひび割れた荒野に、雨がポツリポツリと落ちてくる。やがて驟雨(しゅうう)がおこす土ぼこりと、微細な水蒸気が混ざり合い、遠い記憶を呼び起こす香りが立ち上る。しっとりと地表は濡れそぼち、いつしか水滴の滴(したた)る緑の葉が現れ、そして森に囲まれている自分に気が付く。あたりには誰もいないけれども、そこにはみっしりと命が息づいていて、森の向こうにはまた森が、ずっとずっと続いている。・・・」

気がつけば頬までも濡れています。自分はどこかに行ってしまったのではなくて、やっぱりそこにいたのだということを発見しました。



この前の1曲目はビーバーのパッサカリア。解説の、「守護天使」というキーワードに魅かれます。ソファミレの音が65回も繰り返す、無伴奏での音色に固い心が静かに揺られていきました。

実はこの最初の曲でウォームアップしていたので、2曲目の「鏡の中の鏡」の世界にすんなり入っていけたのだと、帰ってから反芻して思い至りました。


あとはもう音楽の織りなす物語の中に夢中で没入。3曲目は、フィンジー:エレジー、4曲目はヴィターリ:シャコンヌ、圧巻のラストでした。


おそらく心には振動数があって、共鳴する曲調があるのではと思います。

それは香りの世界も同じで、「今の自分はこの香りに調和する」というようなものだと感じています。


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夕闇に溶けていく庭園美術館を振り返り振り返り、余韻に浸りました。


できて間もない、敷地内のレストラン デュ パルクでディナーをして、最後のデザートには「ミズナラおめでとう」のサプライズ・メッセージ。


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お友達の暖かい思いやりに、また新たな作品に向けて頑張る気持ちがわいてきました!感謝の気持ちでいっぱいです。

 

 

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