パルファン サトリの香り紀行

調香師大沢さとりが写真でつづる photo essay

お供の子たち② ひな人形 左大臣 Hinaningyo

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私のひな人形、お供の子たちの中から左大臣
 
私は半べそをかいていると思ったのだけど、アトリエのNセンセイは
「この子は意地悪そうだ」とおっしゃる。
そうかな~。
 
右大臣はちょっとベビーフェイスな感じ。
いや、みんなベビーフェイスなんだけどね。
 

 
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久しぶりにひな人形を飾ろうかな・・・と思ったときは、ちょっと大変だから
『お内裏様(おだいりさま・男雛)とお雛様(女雛)だけにしておこう』
と思ったのだ。
 
しかし、実家の古い茶箱から人形を出しているうちに、
『他の子たちも出してあげないとヤキモチを焼くのではないか?』
と思いはじめ、全部をアトリエに持ってくることにした。
 
そして、ちょっと多いので、親王様たちと随行たちは分けて飾ろうかな・・・と考えているうちに、
『まてよ、バラバラに飾ると秩序が乱れるのでは?』
 
そうモヤモヤしてきて結局全部一緒に飾ることにした。
 
 
といっても自分では大変なので、こういうことの得意なL子ちゃんに飾り付けてもらったのだが。
 
 
これはひとえに、数年前に梨木香歩(なしきかほ)さんの「りかさん」という小説を読んだからだと思う。
 
本の中に、床の間いっぱいに並べられた、たくさんのお人形やお雛様たちが大騒ぎをしている場面がある。
その原因のひとつに、お内裏様の烏帽子(えぼし)が紛失していたため、下の者たちの風紀が乱れていたことが判明。
そこで新しい烏帽子をお内裏様に被せたとたんに、お内裏様は威風堂々とした表情になり、家臣の者たちは皆、ぴたっと静まった。というようなことだったと思う。
 
たかが帽子、されど帽子。
 
たとえ人形の世界でも、人心を治めるためには、こういった権威を示す「象徴的なもの」が必要なのか・・・。
とかなり心に染みたのであった。
 
 
このシーンがとても印象に残っていて、そんなことを思いだしたせいだろう。
バラバラにしないで、やはりちゃんと飾ってあげるべき。
 
 
若いうちは『そんな、形で権威が出るなんて馬鹿げている!』、と意気盛んだったが、年をとると『やっぱり形式も大事だ』ということがだんだんわかってきた。
 
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この子は怒り上戸くん。(もしかしたら泣き上戸くんかも)
小さい頃は私は泣き虫だったので、兄たちによく「泣き上戸」とからかわれたものだ。
 
 
お雛様を眺めると、小さい頃に母親と一緒に並べた楽しい思い出がよみがえってくる。

 
最近では、娘や孫のお雛様と一緒に、お母さんやおばあちゃんが自分のためにお雛様を買う人も増えてきたのだと聞く。
 
そういえば、ウィンドウに飾っている私の古いひな人形を、立ち止まって熱心に見ているのはほとんど年配の女性のようである。
 
 
 
 
 
 
 
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