「あのみごとな藤棚(ふじだな)はどうなっただろう」と懐かしく思い浮かべている。アトリエが六本木に越してから、すっかり新宿御苑から縁遠くなってしまった。
しかしよくしたもので、今度はアトリエの近くの路地をちょっと入ったところの家の塀ぎわに、流れるように咲いている藤の木を見つけた。
ここの藤の花は房(ふさ)が短い。山藤の系統だろうか。
毎年、季節が巡るたび、花の香りをチェックしている。過去の藤(フジ)の花のメモを見直してみると、おおむね香調はぶれていないのだが、年によって強さが違うようであるし、新たに発見した香りの表情もある。
今までの香りの記録では、フジの香りはハニー、グリーン、パウダリー、オレンジフラワー調、少しシンナミック。
この藤はすでに盛りを過ぎている上に、背が高すぎて花まで鼻が届かないのが残念である。
今をさること7年前、「2011年3月11日の震災」の直後の4月の藤は、すでにつぼみをつけていたのでそれなりに咲いてくれたが、その翌年は花芽が育たなく、したがって花もまばら。まったく寂しい藤棚のようすであった。
もの言わぬ植物たちも、地下の根の部分では恐怖におののいていたのだろう。
翌々年の2013年にはまた見事な花を見せてくれた。上の写真は2013年4月19日の新宿御苑の藤の花。今度は蜂がたくさん飛んできていて、香りを嗅ぐのが大変だった。
これは昨年の藤の花が終わった後にできたお豆のさや。
ソラマメみたいである。
妖艶な花の姿に惑わされてしまうが、こういう顔を見ると、やはりお豆の家族だと面白く思う。