まだまだ暑いのに、8月7日の立秋を過ぎたら、急に日差しが秋めいて感じられる。
これは可愛いうちわのお菓子。
中に牛皮(ぎゅうひ)が挟んであって、外は軽い薄焼のもなかのような生地。
しっとりぱりっとおいしい。
銀座あけぼのの和菓子。
食べながら、ふと昔のことを思い出す。
秋の扇・・・たしかこんな詩があったはず・・・。
「秋扇(しゅうせん)」は、寵愛を失った女性のたとえ。
秋になって使われなくなった扇になぞらえたこと。
これは、扇子ではなく団扇(うちわ)だと聞いた記憶がある。
王に顧みられなくなった寵妃を詠んだ中国の有名な詩がいくつかある。
30代の頃の私は、中でもこの哀切を含んだ美しい詩がとても好きだった。
芙蓉不及美人粧(芙蓉も及ばぬ美人の装い)
水殿風来珠翠香(水殿に風来たりて翡翠香し)
却恨含情掩秋扇(却って恨む 情を含んで秋扇をあおぐ)
空懸明月待君王 (空しく明月を懸けて君王を待つ)
-王昌齢-
夏の終わりの夜、水辺の縁台に腰かけ、
来ない王を恨みながら月を見る、美しいお妃。
髪に挿した翡翠の簪(かんざし)が風に揺れる。
とても幻想的な情景ではないか。