パルファン サトリの香り紀行

調香師大沢さとりが写真でつづる photo essay

タバコの葉の香り-4 パイプとキセルと紙巻き煙草と映画と

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「タバコの煙にはたくさんの有害物質が含まれている」「副流煙の害」など、いまやネガティブな情報には事欠かない。

 

 

どこの場所でも喫煙者はすみっこに追いやられている。価格も上がって、たくさんの人が禁煙をした。

10年前、フランスに煙草をおみやげにするととても喜ばれたものだ。税金が高く、当時でも一箱700円くらいしただろうか。成田の免税店でマイルドセブンマルボロをカートンで買っていって配った。

5年くらい前になると、あまりにも高くなりすぎて、みんな煙草をやめてしまった。結果、あげる人がいなくなって、私自身は喫煙をしないので、パリから帰るときどうしようかと困ったこともあった。アメリカ人はともかく、フランス人までやめるなんて・・・!

つい最近、シャネルの映画ポスターに、煙草を持つココ・シャネルの写真が使われていて、クレームがついたという話を聞いた。そういうところまで行くってどうなんだろう?
マイフェアレディでオードリー・ヘップバーンが持っていた長いキセルは、彼女を細くしなやかに見せた。ハンフリーボガードが禁煙していたら、魅力は半減してしまうだろう。


煙草の葉っぱ自身の香りと、煙の臭いは違う。葉っぱそのものの良しあしでも風味は違うが、刻んだ煙草の葉には、銘柄によりフレーバーが付けてあり、それが風味となる。昔あったチェリーというタバコには、サクランボの香りがつけてあった。マイルドセブンはチョコレートだという。この香りをつけるための専門のフレーバーリストがいる。

パイプにつめる煙草にも香りが付いている。アメリカのものはバニラの匂いが強く、長く嗅いでいると、くどくて嫌になってしまう。ヨーロッパのものには、シャンパンの香りや、バーボンウイスキーの香りが付いているものがあってそれは悪くない。パイプたばこのにおいは強いと思われがちだが、葉巻とは全く違う。


燃えていく煙にも臭いがある。私は紙巻きたばこの煙は好きじゃない。

煙草自身は火をつけても、吸っていなければ消えてしまう。昔の時代劇で、キセルに煙草をつめ火をつけて一服すると、ポンと吸殻を火鉢に捨てるシーンがある。パイプも、吸うつどライターで火をつける。だから、口から吐いた煙をのぞけば副流煙は出ない。

紙巻きたばこが燃え続けるのは、刻んだ葉っぱにパルプがまぶしてあるからだ。いがらっぽい臭いはパルプの燃えるせいだと聞いた。紙巻きタバコが吸われた後は、部屋の中に刺激臭を感じる。確かに不快ではある。仕事場では接客スペース以外、調香室はもちろん禁煙。


健康は大事なことだし、人に迷惑をかけるのもいけない。でも、文化って歴史だから、完全に消しきることはできないんじゃあないかな。なんだって度が過ぎればよくない。嗜好品なんだから「たしなむ」程度にとどめられればいいのにね。煙草はそれができないからまずいらしい。


私は喫煙を奨励するわけでも、擁護するわけでもないけれど、ただ、物事が一方向へ傾いていくのが面白くないヘソマガリなのだ。世の中にある「ワルイモノ」を次々と撲滅していったら、いずれ、その程度がわずかなものであってもターゲットになってしまうのではと危惧するものである。

 

 

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