パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

ジャノメエリカ  heath(ヒース/ ヘザー)

 

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小説「嵐が丘」では、アイルランドの田園物語で、
その名の通り、舞台になる家のそばの荒れた丘にはヒースが咲き乱れている。

 

昔読んだときの印象は、復讐の暗い物語だ。あまり覚えていないのだが、確か、主人公のヒースクリフが妻のイザベラを、「お前はなぜあのヒースの匂いがしないのだ!」とののしるシーンがあって、ヒースはどんな匂いがするのだろう?とそこだけは興味を持っていた。

大人になって、公園の植え込みで見つけたヒースは、ちっとも匂いがしなかった。背丈は50センチくらいで、きれいなピンク色の小さな花が、粟粒のように咲いていた。

昔まだ珍しかったポプリ素材として手に入れたドライも香らなかった。この写真の、新宿御苑ジャノメエリカも匂いがない。蛇の目のようだからジャノメエリカ。これは南アフリカ原産だという。

 

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私の見た花は園芸種だから匂いがないのだろう。作物の育たない荒れた土地で咲くアイルランドのヒースは、もっと背丈が低い。モルトウイスキーで有名なアイラ島では、いたるところにヒースが咲き乱れ、花から得た蜂蜜まで香水のようなにおいがすると聞いた。だから、本当はもっと匂いが強いのだと思う。どういうわけかまだ、香りに巡り合う機会に恵まれていない。

 

やせ地で育つヒースは、根がしっかりと張っている。根が大きくなるためには、年月が必要だそうだ。そのため木質が気密で、耐火性が強い。地中海沿岸でとられるホワイトヒースは、イギリス北部のものと違い樹高が高い。ブライヤーとも呼ばれ、煙草のパイプを作るのに使用される。金属でなく、木でできたものなのに燃えないのは、内側にカーボンが付いているからだそうだ。

 

 

▶ 植物事典 ジャノメエリカ ツツジ科エリカ属  学名:Erica canaliculata

 

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