パルファン サトリの香り紀行

調香師大沢さとりが写真でつづる photo essay

ネムの花・ねむ・合歓・シルクフラワー

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 「昼は咲き、夜は恋ひ寝る、合歓木(ねぶ)の花、君のみ見めや、わけさへに見よ」
紀女郎(きのいらつめ) 万葉集

 

意味:『昼に咲いて、夜には恋しい想いを抱いて寝るという合歓(ねむ)の花を私だけに見させないで。ほら、あなたもここに来て見てごらんなさい。』

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まるで、ほほ紅をはくブラシのようなかたち。
夏の夕方、淡いピンクの合歓の花は、甘酸っぱいにおいを漂わせながら静かに咲き、葉はやがて閉じて眠る。

 
うちのベランダにネムの木があって、6月ごろからずっと咲き続けているのだが、毎日帰りが遅いので、写真を撮ることがなかなかできなかった。ネムの花は、夕方から開く。だから、朝出かける前のネムは落ちる前のちょっとくたびれた感じだ。
 

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ネムの香りを作ろうと思い、植木鉢で買ってから4回目の夏を迎える。一番初めのつぼみがついたとき、いつ咲くのかと何時間も前に置いて待った。咲きたての匂いを知りたかったから。

午後3時くらいから、縮れたピンクの糸の塊のような花びらが見えてきて、5時過ぎには一気に伸びてフサッとした形になる。そっとかぐと、初めフルーティーで、淡く、グリーンの、そして粉っぽいにおいがした。

香水のイメージが決まってから3年、毎夏になると花の香りをチェックをして、方針を再確認した。作品になったのは昨年の末。柔らかいシルク毛布に包まれて、幸せな夢を見るような香りになった。

 

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山ではネムは背が高くなり、花の匂いをかぐことが難しい。そんなわけで鉢を買ったのだが、水をたくさん上げなくてはならないので、盛夏になんどか枯らしてしまった。が、駄目かなと思うとちゃんと横からまた新しい芽が出てきて、結構丈夫な花木だ。


 

 

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