パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

エスケープ カルバンクライン 1991

 エスケープ カルバンクライン 1991

カルバンクラインエスケープ、1991年。

 

 

マリン・オゾンタイプの香水。

エスケープは、過剰なストレス社会から逃げようとする時代を反映してできた香り。


アメリカの有名キャスターが、富と名声と、シビアなスケジュールから逃げだす」というような広告コンセプトだった。

ローズとカロンの組み合わせが新しかった。
が、当時は変な香りに感じた。

 

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マリンノートに使われるカロン(Calone)という香料は、1950年頃、ファイザーで薬の製造途中で偶然生まれた。

しかし、あまりに変わったものだったので、どうやって使ってよいか初めはわからなかったらしい。
1970年頃には、調香師の中でも知られてきている。

 

カロンは強い香料なので、初めはおそるおそる、1%濃度に薄めたものをさらに0.1%台の単位で使われていた。

エスケープで大胆に使われたカロンはその後、イッセー・ミヤケのロー・ド・イッセー(1992)で、希釈しないまま使われるようになった。(1000分の7と言われている)

 

 

新しい香りは、もっぱら人間の本能から、初めは危険を感じ、敬遠される。
しかし、ヒット作が出て、後追いが増えると、だんだんと世の中がこの香調になれて来る。

受け入れられるキャパシティが大きくなるにつれ、使われる量は多くなってくる。
そしてその香料は成功する。

 

 

作り手はいつも、新しい香調を探し、それを試みたいと思っているが、セールスの面でのリスクは高い。

 

失敗を恐れない勇気を持った、最初のペンギンは誰か。
(一番初めに海に飛び込むペンギンは、捕食者に食べられる危険が高い。)

 

 

 

 

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