今から10年ほど前、パリの骨董本専門の店で見つけた、アンティーク香水の本。
そのお店では、いつもちょっとした本を買っているのだが、その日は奥から出して来てくれた。
1925年と書いてある。
本の値段を聞いてびっくり。
「ええー、どうしようかなー」と、うろうろ。
でも、こういったアンティークの物は「出会い頭」なので、そのときに思い切って買わないと、後できっと後悔する。
迷った挙句、結局「よしっ!」と買うことにして、カードを出したらダメだっていう。
「そんな現金、普通持っているわけないじゃん。」
そしたら、丁寧に(向こうも必死)キャッシュ・ディスペンサーのありかを教えてくれて、
ニコニコしながら「行って来い、行って来い」という。
キャッシュだったらちょっと負けてよ、ということでようやく交渉成立。
若かったからな~。
ユーロを引き出しに、走って行って帰ってきた。
本を手にした時は嬉しかった~。
しかし、すっごく重くて、5kgもあった。
その日は、その本一冊を買っただけで部屋に戻ったのだった。
部屋でもう一回じっくり読む。
古い香水の本物のポスターがとじ込まれ、白黒の香水瓶の写真に、ラベルは実物が手で貼ってある。
たぶん、丁寧に古いボトルから手ではがしたラベルを使って、きれいに本に張りなおしたんだと思う。
そんな古いラベルだけを売っている骨董店もあったから。
いったい、何部作ったんだろう・・・?
ラリックやガレ、ドームの香水瓶はもちろん、有名な香水店の古い写真や、シャラボーの初期の工場、古い花の処方など。
飛行機に載せるときも、大事だったので機内に持ち込んで、逆にワインをスーツケースにしまった。
東京に帰ってきて、私の香水アンティークコレクションと一緒に撮影したときは、「よく持って帰れた」と再び喜びを実感したのだ。
香水は、ボトルだけ詳しくても、中身=香水だけ知っていても完全じゃない。
その時代背景の中で、その香りが生まれたかという歴史。
どんな香りなのか、パフューマーの意図とその構成を知っていること。
そしてそれにふさわしい名前と、
シンデレラの靴のようにぴったりの美しい香水瓶。
すべてが合わさって、香水のことを理解したと言えるのだと思う。
La parfumerie Francaise et L'Art dans la presentation 1925年