パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

舞扇 五條流

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ひどく懐かしいものが出てきた。
日舞のお稽古で使っていた扇子だ。

 

母は子供のころから踊りが好きで、ずいぶん熱心にお稽古に通ったらしい。
しかし、祖父があまり協力的でなく、途中で断念したそうだ。

子供に夢を託したいというのは親の共通した願いであって、私も3つから日舞のまねごとをさせられた。


初舞台は「てるてるぼうず」。先生が後ろで手取り足とり、振付をしてくださった。
次は菊尽くし、羽根の禿(はねのかむろ)、祇園小唄、藤娘などを2年に1回くらい舞台で踊り、中学に入るまで続けた。

発表会でお引きずりの着物を着る以外はまったく興味がなかったので、当然上達するよしもなく、母は、失望しただろう。

「舞台では絶対に床を見てはだめ。目をつぶっているように見えるから」とよく叱られた。(本当かどうかわからない)

同じ歳に、とても上手な子がいて、その子は難度の高い演目、「手習子」とか、「五郎」(男役)を踊ったのだが、子供の目から見ても本当に立派な踊りだった。

しかし、振袖の子たちが嬉しげにはしゃいでいるのを見て、発表会の当日「私もお姫様の着物が着たい」と泣きだしてしまった。

先生たちが、「この踊りは上手な人しかできないのよ」と、一生懸命なだめていたっけ。。。

 

この扇の柄(がら)は五條流の紋で、まあ、数十年の時を経て再び目にしたのだった。

古い我が家を取り壊すことになって、かたずけに行った時、「コンキリプー」や、「フランスのトランプ」などと一緒に、屋根裏から色々なものが発見された、そのうちの一つである。

古い家から持ち出した茶箱が、今の家にたくさん運び込まれていて、母は一つづつ中を開けては整理を始めている。私も一緒に開けてなんだかんだ言うのは楽しい。

 

一つ思い出すと、当時のことがぞろぞろと、細かいディティールまで鮮明に蘇り、ああ、歳をとりましたなあ・・・。と感無量でござい。

 

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