パトリック・ジェーキントによる「香水」という名の小説。
私がこの本を初めて手にしたのは今から7年ほど前だったと思う。
題名にひかれて、2~3ページパラパラとめくったが、冒頭のグロテスクなシーンにショックを受けた。それでも少し読み進むと、芸術的な香りの表現に思わずのめりこんでしまう。素晴らしいと思った。
しかし、どうしても買う気がしなかった。私は忌むべきものからはできるだけ遠ざかることにしている。こういうものを、家に持ち込むことに嫌悪感を感じたのである。
それでもやっぱり読みたくて、本屋で毎日立ち読みをした。1週間かけて最後まで読んだ。まったく、書店には申し訳ないことをした。
18世紀のフランス。悪臭立ち込めるパリで生まれたグリュヌイユは、自身は体臭を全く持たないが超人的な嗅覚の持ち主である。
調香師に弟子入りし、パリで人気の香水を作るようになるが、やがて究極の香水を作るために猟奇殺人を繰り返すようになる。結末はあっとおどろく・・・。本当に。
小説の中で、若い女性の体臭をとる方法は、花から香料を採取する冷侵法「アンフルラージュ」に沿っている
この本は2006年に映画化され、2007年には日本で公開されている。小説にかなり忠実に描かれているが、あまりの気持ち悪いシーンの連続に目を覆いたくなった。その対比で、映像は詩的な美しさが際立つ。倒錯的な作品である。
私は試写会に呼ばれ、GAGA HEDLINEに取材を受けている。
「人間の肉体から本当に体臭を抽出することができるのか?」インタビュアーからは、YESという答えを引き出したい意向が見えたが、答えはノー、面白半分なコメントをして、こんなことをまねするような人が出ても困る。
これは、香水の小説というより、猟奇小説であり、テーマが匂いだっただけ、と言いたい。
こういう小説を肯定したくはないが、否定できない。