香水の使い方
香水は私に色をつける。
あるときは自分のためにだけ、ルールを離れて顔の近くにつける。
私の香りを、他人にそれとわかるほど主張することを好まない。
むしろ、それにより変化する自分をひそかに楽しみ、かつ恐れながら観察している。
いつもこうありたいという理想の姿、それは誰でも一つではないだろう。
可憐で清純、または知的で落ち着きのある、あるいは優しい母性に満ちた自分を
日々時々に応じて演じ分けたい欲求がある。
そして、香水は衣装以上の暗示効果を持つ。
或る香水は時に、自分が封じ込めてきたタブーを明るみに引きずり出し、
忌むべき別人を目覚めさせる。それは月の満ち欠けに関係するようである。
そんな匂いは稀に、距離のない異性のために耳の後ろにつけた。
手首はオーソドックスで、かつ一番好きな場所である。
髪に手をやった時、頬づえをついた時、香りが「私」を思い出させるから。
しかしながら、身体のどこであっても、つけた場所には緊張感が生まれる。
いったい香水をつけることによって、美しくなれない人がいるだろうか。
まるで見えない宝石のように・・・。