パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

或る香水の使い方

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香水の使い方

 

香水は私に色をつける。
あるときは自分のためにだけ、ルールを離れて顔の近くにつける。

 

 

 

私の香りを、他人にそれとわかるほど主張することを好まない。
むしろ、それにより変化する自分をひそかに楽しみ、かつ恐れながら観察している。 

いつもこうありたいという理想の姿、それは誰でも一つではないだろう。
可憐で清純、または知的で落ち着きのある、あるいは優しい母性に満ちた自分を
日々時々に応じて演じ分けたい欲求がある。

 

そして、香水は衣装以上の暗示効果を持つ。 

或る香水は時に、自分が封じ込めてきたタブーを明るみに引きずり出し、
忌むべき別人を目覚めさせる。それは月の満ち欠けに関係するようである。
そんな匂いは稀に、距離のない異性のために耳の後ろにつけた。

 

手首はオーソドックスで、かつ一番好きな場所である。
髪に手をやった時、頬づえをついた時、香りが「私」を思い出させるから。

しかしながら、身体のどこであっても、つけた場所には緊張感が生まれる。
いったい香水をつけることによって、美しくなれない人がいるだろうか。
まるで見えない宝石のように・・・。 

 

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