美人画展
様々な表情をした女性の絵を眺めながら、会場を行きつ戻りつしながら回っていると、「しだれ桜」というタイトルの、一枚の絵の前で「あっ!」と思った。若い娘が枝垂れ桜の横にふと立ち止まり、花を見上げるかのように顔をやや仰向けている。鏑木清方が1914年頃に描いたものだ。
「はっとした」というのは、その絵ととてもよく似た印象の、昔の香水ポスターが思い出されたからである。
その絵は「GILOT」という、フランスの古い香水ブランドのポスターで、1932年に発刊された「La Parfumerie Francaise et L'art dans la Presentation」という古書に載っている(写真上)。
浮世絵を思わせる色と線の、デコ調のロマンチックなポスターである。ごつごつした樹の姿から、花は「しだれ梅(うめ)」だろう。
展覧会で見た鏑木清方の「しだれ桜」は樹の幹の配置は右側で、娘は着物を着ている。あとで戻ってから本と見比べてみれば、違うと言えば違うが、絵を見た時にはそう感じたのであるから、何か通じる情緒があるのだと思う。