遠くからこの小低木を見たとき、何かがちょこんと葉っぱに乗っているのがぼんやりみえる。
「まさかアオガエルの大群?」
そう思って近づいてみたら、「そうか、ハナイカダだ。」
いつも切り花で見ることが多いから、木の全貌を見ることがない。
すべての葉に花が咲くとは意外だった。
葉っぱの上に咲く、薄い緑色のごく小さな花。
この花を、筏(いかだ)に乗った人に見立ててこの名前が付いた。
子供の頃、お茶のお稽古の時に床の間に一枝飾ってあった。
というか、先生が「これはハナイカダというのよ」と話された「言葉」を覚えている。
この時期の何かほかの花、例えば白い山吹なんかと一緒に活けてあったのかもしれない。
茶花というのは地味なものが多い。
最初に入門した先生のお庭には、今思うといろいろ植えてあったのだが、ぎっしりと植わる茶花の中に埋没して、このハナイカダに特段の興味を持たなかったものだ。
ここの場所は開けたところにポツンと生えているので、木の全体をみることができる。
一枚の葉の上に、雌木には一輪、雄木には複数輪の花が咲くそうである。となればこれは雄木。
花の後にできる黒い丸い果実は、雌木にしかならないので、この木は結実しないのだろう。
はないかだ Helwingia japonica