日本の香り
日本には、6世紀の仏教の伝来とともに「沈香木(じんこうぼく・じんすいこうぼく)」が入ってきました。
「香」もまた、宗教儀式から始まり、やがて衣類に焚きこめるなど、おしゃれにも使われるようになりました。
しかし日本ではそこにとどまらず、11世紀の源氏物語に見られるような、教養のある贅を尽くした香文化があり、さらに茶道や香道といった総合芸術の中にも昇華させました。
そして、私たちは季節とともに訪れる香りをも、日常の中で楽しんできたのです。
日本に「香水」が本格的に入ってきたのは明治の鹿鳴館の時代です。ヨーロッパと日本の生活文化は、上下水道の完備や入浴の習慣の違いもあり、ヨーロッパで「香水」が誕生した必然が、日本には希薄でした。
そのため香水の歴史は浅く、日本には、欧米でデザインされたパワーのある香りしかありませんでした。
この特殊な文化や嗜好、気候にあわせて香水を処方するには、海外の大手ブランドにとって日本のマーケットは小さすぎます。
しかしこれからは、日本の気候風土にふさわしい繊細さのある香水が求められ、楽しまれていくに違いありません。