カンヌから200kmほど西北西へグラースを抜け山を越えて、南仏プロバンスの盆地をサン・クロワ湖を横目に、車で2時間ほど走ったところにヴァランソル高原がある。
我々が訪ねた人はチャールズ・オブリー氏という。
250ヘクタールの彼の農場は主としてラバンジンを生産し、その他には小麦とフェンネル、クラリセージを輪作している。
これからはラバンジンが収穫時期で、もう来週から刈り取りが始まってしまうので、一面紫の畑を見るチャンスは今日が最後ということだったようだ。
この日はオブリー氏の工場にストックしてある香料の商談だったようで、畑を案内するオブリー氏の説明にも熱が入る。
右の紫のラバンジン畑と、左の黄色いじゅうたんはフェンネルの畑。
2色に挟まれた道はトラクターが通る。
ラバンジンに比べれば少しの広さだが、それでもフェンネルばかりこんなにまとまって生えているとは。
フェンネルはその辺に適当に生えているもの、というようなイメージだったが、これほどの範囲に植わっていると圧巻である。
この一帯は毎日はげしい雷が起きるという。
下界は日照りだったというのに、そういえば山の上のほうにはモクモクとした雲が湧き上がり、遠くから白いもやが峰を降りてきた。
急に大粒の雨が落ちてくる。
みんな構わず畑を歩き回っているが、こちとら帽子もカメラも濡らしたくないのでいったん車に退却。
帽子を脱いで、ビニール袋をかぶせたカメラを持ってふたたび後を追う。
7月の第一週に、PCWのブレゾー氏から「来週あたりラベンダーかラバンジンの畑を見学に行くよ」と言われたが、場所の具体的なアナウンスはなく、なんかアルプスのほうへいくみたいなアバウトな話であった。
PCWの庭にもたくさんのラベンダーが咲いており、正直『今さらラベンダー畑か・・・』とちらと頭をよぎったのであるが・・・。
日々のことをこなすのに忙しく、確かめる暇もないままに「まいっか」と思いつつ半ば忘れていた。
前日に「明日行くから」みたいな感じで言われ訳も分からずついていったのであった。
行って帰ってくるまで、車がどこをどう走っているのかもよくわからず、とりあえず道路標識などをとりつつ記録しておく。
「我々が行った場所はなんというところですか?」「あの農場のアドレスを教えてください」とせっついて、後日、農場の名前と住所を聞いてマップを検索、ようやく道中のルートや地理的なことがわかってきたところである。
いわゆる観光用に作られた畑ではなく、実際に香料を生産するための農場なのでスケールが大きい。
しかも250ヘクタールの各畑を車で回りながら、オブリー氏が熱心に説明してくれるので想像していたよりかなり面白い。
しかし何度も車を乗ったり降りたり畑の中を歩いたり、「この上に登って高いところから写真を撮れ」とか、雨が突然降ってきたと思えばカンカン照りに。
いちいち帽子だの手袋だの言っている暇もなく、二人の早口のフランス語もついていけないしフラフラである。
強烈な紫外線の下の無防備な姿はあきらめとやけくそ。
美白よ、さようなら・・・・。
ラバンジンはラベンダーとアスピックの交配種で、ラベンダーより丈夫で収穫量が多い。
右はスミアン種、色が薄く背が高い。左はグロッソでびっしりと密に花が咲き紫が濃い。
あとで見て説明と写真がわかるように、ときどきなぐり書きでメモをはさんでカメラで撮影しておく。
一見無駄そうな写真やぼけて失敗したものも、ヒストリーになって、出来事や説明された内容を思い出すのに役に立つ。
これはラベンダー・ラバンジンの花の刈取り機。
3列を同時に刈り取ることができる。
なるほど、畑が畝(うね)になっているのはこういうわけだったのか。
今日はこのあとクラリセージの収穫と蒸留を見せてくれるらしい。
場所を移動するが、途中にオーク(樫の木)の森が続いている。
なんとここでトリュフをプランテーション栽培しているという。
「satoriはトリュフを知っているのか?」とブレゾー氏。
「もちろんですよ!冬にスッポン鍋の最後を雑炊にして、溶き卵とスライスしたトリュフをたっぷりかけると絶品ですよ♪」
「それはあまり人に言うな、人気が出るとトリュフが足りなくなる」
と言われていたにもかかわらずブログに書いてしまった!
ラベンダー Lavandula vera, Lavandula angostifolia
高地の乾燥した山岳地帯で生育。各茎の中央に1つだけの花がつく。
アスピックラベンダー Lavandula spica
海抜0~800m 複数の茎に分岐し、それぞれの側枝のつけねには小さな花が咲く。
ラバンジン
ラベンダーとアスピックの交配種で、比較的簡単に栽培でき収穫量も多い。これも複数の茎に分岐し、それぞれの側枝のつけねには小さな花が咲く。
つづく