「禁断」という名の香水。1932年。
カーネーションとパチュリのアコードのこの香水は甘く重く暗い、三拍子そろったオリエンタルタイプ。今どきはつける気になれない。特に日本では。夏の授業でこの香りをムエットにつければ、教室の中を征服してしまう。
比べて同じ系譜と言われるサンローランのオピウムは、絶妙なアコードで重さを感じない。バルサム、レジン類がだらけずにびしっと立っている。
でも、このタブー。ネーミング、イメージ、香調がばっちり決まっていて、広告写真が実にすばらしい。
伴奏ピアニストがあまりに魅惑的な匂いなので、演奏中に、我を忘れてキスをするバイオリニスト。だれだって、こんな想像をかきたてられたらタブーをつけてみたくなるに違いない。
こういった香水は、天然香料の良しあしで断然違ってくる。
使える素材が変わり、昔のようなニュアンスを出すことはできないだろう。