「愛の妖精」(La Petite Fadette)はフランスの作家、ジョルジュサンドによって書かれた田園小説である。
裕福な家の美しい双子の男の子と、貧しい家に生まれたみっともない少女ファデットの成長していく姿を描いている。
成長の過程で不安定になる十代、自分に自信がなかったり、アンバランスな心と体。ちょうど同じ年ごろの、ファデットの揺れる心、献身、美しく変貌していく過程などをわが身になぞらえて夢中で読んだ。
世知辛(せちがら)さを味わったこの年で、今、あらためてストーリーを読むと、少し甘く理想論的すぎる。
けれども、児童から少年少女へ、大人になる経過で読めばきっと健康的な成長を促す栄養剤となるだろう。
すがすがしく素直な物語だと思う。
あらすじ
いかにものどかな田舎の村を舞台にしたものがたり。魔法使いと畏怖される老婆は、実は薬草医学のスペシャリスト。だが、村人とは(誰かが病気で頼られたとき以外)付き合わない変わり者だ。
孫娘のファデットと小さな弟もまた、貧しい身なりゆえつまはじきにされている。本当は信心深く良いこころがけの少女なのに、いじめに対しては辛辣なしかえしをするのでひねくれ者として誤解されてしまう。
一方、豪農の家に生まれた双子の男の子は、周囲に愛されすくすくと何不自由なく育つ。仲の良い二人のうち、兄は感じやすい繊細な青年に、弟シルヴィネのほうは、一帯でも一目置かれるたくましい若者に成長する。その双子にとっても、ファデットは苦手な相手だ。
しかし、ある出来事がファデットと弟シルヴィネを結びつける。ファデットの知性と美徳を知った彼は彼女に惹かれ、二人はひそかな愛をはぐくんでいく。みっともなかった彼女は、さなぎが蝶になるように美しく変貌していく。
カンヌ 蚤の市の本屋