パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

シルクイリスのできるまで。 Silk Iris,

菖蒲の香りのシルクイリス

香水、シルクイリスはこうして生まれました

 

シルクイリスのイメージ

パルファンサトリには、イリスを主題にした香水が2つあります。

 

シルクイリス(Silk Iris)とイリスオム(Iris Homme)、先に生まれたのはシルクイリスです。
長い間、ミューズとして私の心にいた女性をイメージして作りました。

 

この香りのモデルは、高校生の時に見た白黒の映画雑誌に写っていた女優さんで、確かフランスの方だったと思います。

B5くらいの大きさの、薄い本の右側のページに横顔と半身が写っていました。

白いシルクのシャツの胸元に、パールのネックレスをつけただけのその人はシンプルな装いがとてもエレガント。
私も大人になったらこんな女性になりたい...という気品のある女性でした。


この香りは強く遠くまで届くというよりは、淡くいつまでも体を覆うように香ります。

月の光が肌におりて、白い肌が内側から輝くようにというイメージで処方しました。

 

パリの白いイリス

イリスの香りの特徴

 

バラやジャスミンのように華やかでドラマチックなフローラルとは異なり、イリスは、控えめでありながら持続力のある香料です。他の香りを支え、調和させ、輝かせます。

もともとパウダリーな香料が好きで、イリスは調香を学び始めたころから特にお気に入りの香りでしたので、イリスの持つ上品な輝きを中心にした香水を作りたいと常々思っていました。

着想となったミューズはフランスの女性ですが、この香水を作っていくうちに、「表に現れるのを恥じる美しさ」という日本的な概念を形にしたい、とも思うようになりました。

 

シルクイリスの香りの構成

 

香りは大きく3つの要素で構成されています。

私が作成した「イリスコア・ベース」の香調は、いわば削りたての新しい木材と、白いスミレの中間にあります。また、視覚的にたとえるなら「スターチ(カタクリ粉)をつまんで指先を滑らせると、キラキラと細かい粒子が煌めく様子」とでもいいましょうか。

 

白桃

「残香性のあるシトラスベース」と「白桃」のベースも新たに作り、イリス・コアベースの繊細さを壊さないように合わせました。

うっすらとうぶ毛が光る白桃のベースは、ジャスミンとヴェロートゥン(Veloutone)が主になっています。 ヴェロートゥンという香料は、「瑞々しい白桃の果汁のような、それでいて軽い渋みのある、セロリのような香り」です。

ラストノートも強いアニマルノートは避けて、私の好きな「植物性のアニマルノート」を使い、清潔なセンシュアルで終わるように心がけました。

 


お洋服で言えば、「装飾、ディテールに凝る」のではなくて、「テクスチャーとカットの美しい、着心地のよい」香りでしょうか。

たとえ同じ形の白いシャツで一見似ていたとしても、化繊と海島綿、あるいはシルク、カシミアでは、輝きや動いたときのシルエットが異なります。

声高に主張しなくても、存在そのものが上品に見える。そんな違いがわかるような方につけて頂きたいと思って作りました。

 

ユニセックスな香り

 

シルクイリスははじめは女性のために作りましたが、支持してくれる男性が増えているように感じています。

 
男女が共有できる香水を、30年前はシェアフレグランス(とかユニセックス)と言いましたが、その後、ジェンダーフリーとかジェンダーレス(この用語については諸所意見があるようですが)の香水と呼ばれるようになりました。
 
最近ではアンドロギュノスという言葉もみられます。

 
男女兼用とか、中性的な香りというより、つける側の意識に垣根がなくなり、許容範囲が広がってきたように感じます。
 
メンズ=マスキュリンな香り、という図式は過去のものになりつつあるように感じますね。
 
 
 
 
 

 

シルクイリス -Silk Iris- 2010年発売


シンプルなシルクのシャツに、パールのネックレスをさらりと着けた美しいひと
月のきらめきのように細やかな光の粒子が、白いオーラとなって、その素肌から匂い立ちます。
光沢のあるホワイト・イリスが柔らかく軽く香りつづけます。トップノートは、あっさりとしたシトラスの後ろに、桃のうぶ毛のような淡い香りが巧みに隠され、まろやかさを出しています。イリスの繊細さをそこなわないよう、ラストは色彩をおさえたサンダルウッド・ムスクの優しさが包みこみます。
 

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