パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

イリス Iris アイリス 匂いあやめ

ニオイアヤメの根から採れる香料イリス

グラースの天然香料

 

こちらに来る大きな目的に、最高の素材を見て、いつも感覚をブラッシュアップしていたい
という気持ちがある。

 

天然香料は、もちろん世界中に生産地がある。

 

でも香料の世界はコネクションがものを言って、
ここグラースの会社にはいいものが集まってくるので、
たくさんの種類の香りを見ることができ、ふんだんに使わせてもらえる。 

 

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イリスの花

 

イリスは、本当にすてきな香料だ。

ちょうど今、花盛りを迎えて、パリでも、グラースでもたくさんの写真を撮った。
あでやかさと、静けさを持つ花。

この、匂いあやめ。アイリスとも呼ばれる、イリスの根から香料は採られる。

とても高価なものなので、今では香水、それも高級品にしか入れられない。
安い大量生産品には絶対に入っていないといえる。

 

ニオイアヤメの根から採れる香料イリス イリスの香料

 

たとえば上は、数あるイリスルートの香料の一部。
これは匂いをかぎやすいように10%の濃度にしてある。
この中には気にいったものがなくて、奥からもっと出してきてもらった。

イリスルート、またはオリスルートの香料は、
レジノイド、リキッド、バター、アブソリュード、コンクリートなど、
製法も形状も名前もさまざまあるので、ちょっと面倒だ。

また、バターに含有されるイロンも8%、15%と、含有量によって、メーカーによって、匂いも全然違う。


イロンが多ければ、立ちもよく、力強く、あとに残る。
しかしイロンだけを混ぜて、含有量を増やしているものもあるから注意が必要だ。

チョコレート色のは、レジン。匂いは甘さがあり、色のように香りも茶色っぽい。
私の求めていたイメージではない。

イリスバターは、製造過程で出る、ミリスチン酸という成分が残っていて、
そのため固体になっている。

ここからミリスチン酸を9割以上除いて、イロンの含有率、純度を高めた液状のものが、最高のイリスの香料だ。天然イロンと言ってもいい。

 

それではいっそ、合成イロンのほうが純度が高いから良いかと言うと、これがやっぱり違うのだ。

一度、試しに、同じ処方の中の天然イリスを、合成イロンに置き換えて作ってみたところ、ふくらみやボリューム感は、天然を入れたほうが圧倒的にある。

合成イロンだってかなりお高い香料だけど、両者を比べると、スカスカの感じがする。

 

ちょうど3年前のコングレ(調香師会議)のときここへ来て、この最高の香料に出会った。
それからスタートした香水が、もうすぐ発売になる。

 

 白いニオイアヤメ、アイリス、イリス

 

日本でかぐ香りと、フランスで見るのでは同じ処方の、同じ素材でもかなり違う。

香料が東西を行ったり来たりして、実際の香りのすり合わせをしていかなければならない。

 

香りを選び、咀嚼して、イメージを組み立てて。それは、2-3日、2-3週間の滞在では難しい。
本当は、最低2-3か月、できれば2-3年は滞在したいところだけど、今時は、世の中そんな待ってはもらえない。

 

せいぜいは、年に1-2度訪れて、感覚をフレッシュにしておくことだ。

 

 

▶植物辞典 イリス、オリス、アイリス、ニオイアヤメ、  学名:Iris pallida Lam.

 

 

 

 

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