ブランシュ・ド・カスティーユは有名なフランス王妃。ルクサンブール公園にて。
Blanche de Castille 1188-1252
フランス王ルイ8世の王妃で、12歳で即位した息子ルイ9世の摂政として、長期間の影響力を持った。
パリ、ルクサンブルグ公園の中庭。
ぐるりと取り囲むように、フランスの偉人の彫像が並ぶ。
ランチタイムは、近くのオフィスから
たくさんの人がサンドイッチをもって休憩に来ている。
▶ 大沢さとりの休日読書 2010年6月13日 王妃の離婚 佐藤賢一
(ジャンヌ・ド・フランスとルイ12世の離婚裁判)
王妃の名はジャンヌ・ド・フランス。1948年、フランス王ルイ12世から離婚裁判を起こされたことを題材にした物語だ。
佐藤賢一氏の小説は、中世ヨーロッパを舞台にしたものが多い。
氏の作品であるカルチェ・ラタン、双頭の鷲、傭兵ピエールは、フランスを中心にした歴史や地理を勉強するのにはもってこいの小説である。
といっても、難しく退屈な年代と人物名の羅列ではなく、それは小説としての肉付けがたっぷりとされて楽しく読める。歴史小説を読めばいつも感じることだが、人間の本質はどの時代も同じと見えて、現代の事件に置き換えても無理がない。
主人公はフランソワ。くたびれた、落ち目の中年弁護士が、フランス国王の離婚いう世紀の裁判に、圧倒的な不利を承知で王妃側の弁護を受ける。もう一方のヒロインはフランソワの亡くなった恋人ベリンダと、フランス王妃ジャンヌ。
過去と現在を行ったり来たりしながら話が進む。
持前の負けん気と冴えわたる知性、庶民のパワーを味方に、権力に敢然と立ち向かっていく過程で、彼自身もまた人生を取り戻し、輝く晩年へとつながっていく。
冒険活劇、バイオレンスと権力闘争、そこに美女がからんで、といえば誰でも興味がわくのではなかろうか。なにより、離婚する権力側の色男の王様が卑怯でかっこ悪く、落ちぶれて禿げた弁護士がどんどん素敵になっていく。
よくできた小説は皆、登場人物がいきいきとして現実感がある。佐藤氏のどの小説にも、魅力的な女性が主になり従になり登場する。人間は滑稽で醜いもの、そして愛すべきものである。きわどい表現さえ、氏の人間に対する温かい視点を物語っている。
ユーモアとペーソスを「深く研究された史実」というやすりで磨き上げた、文化の薫りある「超娯楽作品」である。