石(いわ)ばしる、垂水(たるみ)の上の、さ蕨(わらび)の、萌え出づる春になりにけるかも
志貴皇子(しきのみこ)
春の喜びを詠う歌、蕨(わらび)の歌は万葉集からただ一首。
ちいさな拳骨(げんこつ)を握ったような形は赤ちゃんの手にも似て、なんだか夢をいっぱい握っているような気がする。
こういう小さな草を野に見つけて食べたり、器のモチーフにしたリ、詩に詠んだりするところに、冬を耐えて、春を楽しもうという気持ちが表れていると思う。
「わらび」と「ゼンマイ」と「こごみ」はよく似ていて、一瞬混乱してしまう。
(わらびは、カタカナのワラビでは感じが出ないと思っている。こごみも、コゴミじゃない・・・)
春になって、スーパーに山菜が並ぶようになると、「あ、そうそうこれがゼンマイ」「これがわらびだっけ」とか思い出す。
わらびは茎の上の方に固まっていくつかの巻きがあり、成長すると茎が伸びて、その途中から羊歯状の葉が交互に開いていく。
一方、ゼンマイは根元から1本だけ立ち上がっている。成長した葉も、根元から開いていく。
この写真は「ゼンマイ」。
こごみの写真は見つからないのだけど・・・時計の中のばね仕掛けを、こごみではなく「ゼンマイ」と呼んだのがなんとなくわかる(ような気がする。
ゼンマイは茶色や、濃い緑をしている。
グイグイと巻きが持ち上がって、こごみよりちょっと強そうだ。
「ぜんまいばね)」は15世紀のヨーロッパで作られ、16世紀になってフランシスコザビエルによって日本にもたらされた。
時計の中を開けて、渦を巻いた部品を見た日本人は、植物の「ゼンマイ」から名を付けた。
ぜんまいばねは英語で「Mainspring」だ。
ヨーロッパの人は「Osmunda(ゼンマイ)」とか、「Pteridophyte(シダ)」とかいう名前をどうして付けなかったのかな?って思ったりする。
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