パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

お蚕(かいこ)さん③真綿(まわた)

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「真綿(まわた)にくるまれて育つ」
大事にされたおぼっちゃまなどを指してこう呼んだ。

 


この30センチ四方の小さい端切れのようなものが真綿である。
真綿(まわた)は植物性ではない。

綿花(めんか)からとれるワタではなく、繭(まゆ)から作られる。
なんだか、黄ばんであまりきれいじゃないと思うだろうが、絹(シルク)100%のワタである。

 


この真綿の原料は数年前、和の小物を作っていた女性から頂いたものだ。
「今ではもう作っているところがほとんど無いので、買えるだけ買った」
というのを少し分けてもらった。

海外に持って行き、たくさんの人に見せてシルクの素晴らしさを説明したりしたが、しばらくしまいっ放しにして存在を忘れていた。

この数日のカイコの話から想い出して、この真綿をひっぱりだしてみた。

一つの繭(まゆ)を延ばしてこの一枚が作られている。

一本に糸がつながっていた繭(まゆ)も、カイコがかえった後は穴があいて、糸は短く切れてしまうので紡績には向かない。


そこで、伸ばして真綿にする。

 

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二人で四隅を持って丁寧に引き伸ばすと、30センチの端切れはどんどんと大きくなり、上手に引き延ばせば、たたみ一畳ほどにまで広がる。

蜘蛛の糸のようにとても薄くて軽い。
やって見せると、その手触りにみんなびっくりする。

このうすいうすい真綿を、何枚も重ねて、お布団にしたのが真綿のふとんだ。
お殿様とか、高貴な方がかける。軽くてとても温かい。

昔はダウンがなく、防寒用寝具の貴重な素材だったのだ。
冬はきものの下に薄く真綿を入れた襦袢を着たらしい。

 

そうだ・・・、思い出が芋づる式に引き出される。

私が小学校の頃はホカロンもなく、冬の通学はとても寒かったので、鷹の爪(唐辛子)を10センチ四方の真綿でくるみ、それを制服の下につけて体を温めたこともあった。
当時は真綿は普通にあったような気がする。

今の人は見たこともないんだろうな。

 

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引き延ばすのはなかなかうまくいかない。途中でちぎれてしまったり、失敗したのは丸めて鹿の子袋に入れ毬(まり)にした。

本当はこれで、いつか袢纏(はんてん)を作りたいな~と思っている。
ガーゼのような柔らかい生地を薄桃色に染めて、中に真綿を入れる。
すごく贅沢な室内着だ。

プレゼンするたびに一枚、また一枚と減っていってしまうので、実現するかわからないけど。

 

フワフワに癒される。

 

 

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