パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

昭和の編み物 鈎針のパッチワーク

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これは、昭和の編み物、母が鉤針で編んだパッチワークである。
 
なんと、私の生まれる前からあった。
もう、作ってから半世紀以上経っているわけである。
 
 
これは兄たちのセーターや、いろいろな残り糸を使って少しずつ編みためたもの。
戦後、物のない時代だったので、古いものをほぐしてリサイクルしたのだと言う。
色もバラバラ。よく見ると途中で足りなくなったのか、模様の中で糸が変わっているパーツもある。
 
10センチ四方の小さな四角を編んで、縦横で15枚くらいづつ繋ぎ合わせた、大きな正方形の毛布のようなもの。
 
父の背広のお仕立てあまりの布地を、グレーや黒や紺の、これもまたパッチワークのようについで、裏に貼ってある。
 
 
私が小さい頃は、これはコタツ掛けになっていたのを覚えている。
今は冬になるとソファの隅にちょっと掛けてあったりするのだが、もうすっかり当たり前に景色になじんでしまい、存在すら忘れていた。
 
この正月に久しぶりにニットの帽子を編んでいたときに、ふと目が留まり、あらためてその由来を母に聞いてみたのである。
 
すると思いだしたように、母はお菓子の箱の中から5~6枚を繋いだものも出してきた。
なんでも、もう1周するには足りなかったから、小さな敷物を作ったのだそう。
その、60年前のものがすぐに出てきたりするから驚きである。
みすぼらしいけれども、いかにも昭和を感じさせる味わいの深さ。
 
 
 
暖かく快適な暮らし。
こんなに国が豊かになったことには感謝する。
 
ただ、今でこそ世の中は衣美食(ほういびしょく)を尽くしているけれども、私はこうしたものを見るたびに、ほんの少し前の日本が貧しくてつつましく暮らしていたことを思いだし、今の日本がまるで一流国のように振舞うことは恥ずかしいものであると思う。
 
 
 

 

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