ムーンライト、月光という名の白いバラ。
今はバラの盛りで、旧古河邸や深大寺など、有名なバラ園が見ごろを迎えている。
新宿御苑も5月初めから、1週間単位でどんどん蕾が開いていく。
でも、整然と並んだバラ花壇よりも、私は庭のところどころに気まぐれに咲いているバラが好き。
枝折り戸をあけ、雑木の小道を抜けると、秘密めいた小輪バラのブッシュがある。
少し開けた芝生のわきには、花つきは少ないけれど、香り高い大輪のブルームーンや、ベルベットの肌を持つ深紅のバラ。
夏の、蒸れた緑の匂いがする。
そんなバラがいい。
透明な冷たい秋に長く咲く秋バラと違い、夏のバラは急ぎ足でやってきて駆け足で去っていく。
そこには情操の騒がしい、すこし乱れたしどけなさが漂っている。
バラは、庭から切って活けるといっそうその美しさが引き立つ花だ。
野生と理性のある生き物。
一輪でも、数輪でも、たっぷりとグラマラスに飾っても。