パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

大正会夜話 帯谷瑛之助

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とってもレアでコアな本「大正会夜話」は、大正生まれの会のその綺羅星のようなメンバーの魅力をひとりづつ語った、今でいうエッセイである。著者は自らも会員の帯谷瑛之助氏。

 

この本はあまりにマイナーすぎて、まあ昨日の裏千家のお家元の初釜で、先代の鵬雲斎大宗匠とお会いしなければ、たぶん書かなかっただろう。

「スター」が今のように身近な存在でない時代、各界の著名人が銀座に集まった「大正会」は憧れの社交場だったそうだ。

目次には、私も知っている名前だけでも

淡島千景石井好子、一竜斎貞風、江崎真澄音羽信子、佐治敬三、団伊久磨、林家三平、原文兵衛、藤間紫、藤山愛一郎、三船敏郎、三木のりへい、三島由紀夫水上勉三橋達也森繁久弥柳家小さん、森光子、伴淳三郎千宗室、(敬称略)などの会員名が並んでいる。

この中でも、多くの方がすでに鬼籍に入られ、大正は遠くなっている。(私は昭和の生まれだ。念のため)   

 

森繁久弥さんが作ったという会則が面白い。その一部だけれど、

・この会はただ大正に生まれたということだけの集まりです。
・この会には、特別な目的や意味は何もありません。
・この会議では、くだらない個人的な話題を5分間以上しゃべることを禁じます。
・この会は会費をとりますが、金持ちは進んで、かつ匿名で金をださねばなりません。
・この規約をまもらないと、罪状によって罰金をとります。
  軽犯罪に相当すると認めるもの1000円
    有期刑に相当すると認めるもの5000円
  終身刑または死刑に相当すると認めるもの一万円
・罰金は現金で支払い、手形はダメです。

というわけで、自分の宣伝をしたり、話を一人占めしたりすると、すぐ鐘がなって罰金をとられるのだそうだ。
三船敏郎さんは、先に罰金5000円を支払ってから映画の宣伝を話したらしい。
おおらかでユーモアがあるエピソードだ。

 

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宗匠千宗室・先代の裏千家お家元)について書かれたところがとてもよくて、

「銀座を歩いていて、非常に目立たないけれど、非常に目立つ男である。千ちゃんもそういう男の一人である。いくら伝統を背負って生まれてきても、それに負けて伝統を背負いきれぬ男だってある。それをちゃんと背負って、しかもひけらかすこともなく、いぶし銀の艶で今日に生かしている。まこと「今日庵」の主人にふさわしい男であろう。」(大正会夜話,昭和45年,129P)

 

 

しかし、もう大正生まれの方は最年少でも84歳、今では人数もごくわずかになり、来月の例会で最終回を迎える。

それで母が、「最後の例会の時、みんなにも読ませてあげたいのでこの本を探してほしい」というので、ネットで「大正会夜話」と検索し古本を買い集めた。
6冊発見した。

大正村というところもあるそうだ。(明治村は知っていたが、大正村があるとは!)

 

母は写真を見て喜んで、「あら、犬丸さん(帝国ホテル社長)も若かったねえ。(晩年の)森シゲさんには、『一緒にお風呂に入りましょう』なんて(ふざけて)言われたことあんだよ」

そんなわけで、私もちょっとパラパラとめくったら面白くてつい夢中になって読んでしまった。

 

気をよくした母は、会の盛んなりし頃の想い出話を、孫たちにもしたところ、
「今の若い人は高橋圭三さん(アナウンサー・故人)も、西沢爽さん(作詞家・故人)も、みんな知らないんだよ、がっかりしちゃうね」(そりゃー、知らないだろ)

 

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